2016 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アメリカ禁酒小説/運動におけるジェンダーギャップの研究
Project/Area Number |
15K02338
|
Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
森岡 裕一 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (20135635)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 禁酒物語 / ジェンダー / 家庭小説 / 感傷小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
夏期の海外出張では、ニューヨーク公立図書館、コロンビア大学図書館において資料調査・収集を行った。禁酒物語をドラマ化したテクストに集中して調査を実施したが、Charles W. Babcock, A DRIFT: ATEMPERANCE DRAMA(1880), E.C. Whalen, UNDERTHESPELL(1890), T.P. Taylor, THEBOTTLE(1847)など貴重なテキストをちょうさすることができた。とりわけCarleton Potter, THE WHIRLPOOL: A NARRATIVE SHOWING THE EVIL OF TEMPERANCE(1852)はニューヨーク公立図書館アーカイヴに新たに収蔵されたもので、長く探し求めていた資料が入手できたことは大きい。 春には旧知のテキサス大学歴史学教授カール・ジャクソン氏と再会し、禁酒運動、禁酒物語に関して広く情報交換をおこなうとともに、同教授によりテキサス大学所蔵の文献についての教示と稀覯書閲覧の斡旋をいただいた。その結果、オースティン校にあるCollectives and Deposit Library 所蔵のマイクロフィルム閲覧ができたことは貴重である。Josia Allen's WifeやMary Chellisといった女流禁酒小説家の作品を閲覧および一部コピーできたし、これまで書物の形では入手できなかった匿名著者によるMY COUSIN MARY等の作品をマイクロフィルムで読めたことは大きな成果である。 これまでに収集してきた資料をもとに、男性性に対する二つの見方からまったく正反対の対応が示される禁酒物語の構造分析を勤務先の研究論集に論文として発表し、次の女性作家との対比でジェンダー論を展開する足掛かりを得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象である禁酒物語はテクスト入手が困難で、アメリカ各地の図書館に散在する資料に直接あたるしかなく、拠点となる機関に直接赴き閲覧・コピーするか、書物の保存状態如何でコピー不可の場合は筆写やメモを取るしかなく、たびたびの出張が必要となる。その意味で、夏・春の休み期間にアメリカ出張で資料調査を継続的に行えたことは、研究のための基礎資料を整備するうえで重要である。これまで相当数の文献が収集できたことは大きな成果である。それらの資料の分析も同時進行で進めており、その成果は論文として公表されている。禁酒物語関連の資料は膨大で選択的に資料調査と収集を進めているが、時間等の関係で収集できなかったものについても所在の確認を進めており、今後の出張で入手する予定である。研究の成果をまとめた著書の刊行に向けての準備も8割方できているのが現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
禁酒物語に関しては量的アプローチが不可欠で、そのため対象資料は多ければ多いほど研究の精度が向上すると思われる。したがって、これまで同様、アメリカ現地での資料調査・取集を継続しなければならない。収集した資料の分析についても同様である。その際、これまで集中的に行ってきたT.S. Arthurなど男性作家の作品からHarriet Stowe, Mary Chellisなどの女流作家の作品分析に焦点をずらし、ジェンダー間の相違点を抽出する作業に移りたい。その成果を2本の論文にまとめた後、既存の論文と合わせ一書をなす計画である。
|
Causes of Carryover |
関西外国語大学の旅費規定に従い航空機運賃については大学が支給する個人研究費を当てたため、予定より支出額が少なくなっている。。また、図書館等でのコピーの際、領収書の入手ができないことが多く、その場合は私費にてまかなっている。そうした科研費助成金によらない出費があり、予想を下回る予算執行となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も当該年度と同様の事業を計画している。研究資料取集も継続するが、成果発表を中心とした年度になるため、そのための備品の充実にも予算をさき、助成金の有効活用を目指している。
|