2016 Fiscal Year Research-status Report
アジア系アメリカ文学研究のポスト・グローバリズム的展開と多極的研究体制の構築
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15K02339
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 秀行 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90230581)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トランスナショナル / トランスボーダー / 領域横断性 / ポリカルチュアリズム / アジア系アメリカ文学 / アジア系アメリカ演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年度同様、「ポスト・グローバリズム」的パースペクティヴに基づく研究法により、黄色人種(日系・中国系)とその他の人種(白人)の「ハイブリディティ」を持つアジア系アメリカ人作家たちの文学に見られる、人種的・文化的「領域横断性」の解明を試みた。関連する資料の収集を行い、現在、資料研究を行っている。その上で、研究計画では平成29年度に予定していたアジア系アメリカ人の文学(特に演劇)に見られる、国家的・文化的「領域横断性」の解明にも、予定よりも先行して取り組んだ。その成果として、平成27年度に行った科研研究会(平成28年1月30日、神戸大学)の研究発表内容を発展させて、論文として纏め発表した("Fred Ho's "Afro-Asian Connections": His Life, Politics, and Art"『神戸英米論叢』第30号,平成29年2月, pp.39-52)。また、ソロパフォーマンス・アーティストDan Kwongを神戸大学に招聘し、講演会を開催するとともに、インタビューも行った(平成28年9月24日、10月3日)。さらに、David Henry Hwangの演劇におけるトランスボーダーネスについての研究を進め、その成果として、2回の研究発表を行った(「ポスト・ミレニアル期のDavid Henry Hwangのtrans-bordernessをめぐって」日本アメリカ演劇学会年次大会シンポジウム、平成28年9月11日;「トランスナショナル化するアジア系演劇」アジア系アメリカ文学研究会例会、平成29年3月11日)。中長期的目標としての東アジアとアメリカを結ぶトランスナショナルな研究体制の構築のために、平成29年2月、UCLA教授King-Kok Cheung氏を神戸大学に招聘し、研究集会での講演や本科研プロジェクトについての助言等を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では平成29年度に予定していた、「第一世界」(アメリカ)と「第三世界」(アジア、アフリカ」を繋ぐ「ポリカルチュアリズム」的アジア系アメリカ人の文学(特に演劇)に見られる、国家的・文化的「領域横断性」の解明にも、予定よりも先行して取り組み、David Henry Hwangの21世紀初頭の演劇におけるトランスボーダー(トランスナショナル)性について、2回の学会発表を行った。 また、平成29年2月に神戸大学に招聘したUCLA教授King-Kok Cheung氏から本プロジェクトの意義を高く評価していただき、その上でその中国、台湾、韓国における本分野の研究者のネットワークを積極的に利用することの可能性なども含めて、中長期的目標としての東アジアとアメリカを結ぶトランスナショナルな研究体制の構築のための極めて有益な助言を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目及び四年目(最終年度)にあたる平成29年度及び平成30年度においては、引き続き「ポスト・グローバリズム」的パースペクティヴに基づく研究法を理論的に明確化し、遂行していく。具体的には、東アジアとアメリカを結ぶ研究ネットワークを構築することを目指し、特に東アジアの本分野の研究者たちとの交流をより一層深めていく。 そして、過去2年間に行った研究の成果に基づき、1)アメリカ国外で生まれで、外国語である英語を使って文学作品を書く「ディアスポラ」のアジア系アメリカ人作家たちの文学、2)黄色人種(日系・中国系)とその他の人種(白人)の「ハイブリディティ」を持つアジア系アメリカ人作家たちの文学、3)「ポリカルチュラリズム」的アジア系アメリカ人の文学(特に演劇)、における人種的・国家的・文化的「領域横断性」の解明を相互に関連付けながら進めていく。
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Causes of Carryover |
平成29年2月16~20日にアメリカ(ロサンザルス、UCLA)に出張した際に、本学の旅行システム(日本旅行委託)により、出張費を概算で処理してもらったが、出張後に清算した結果、実際の出張費が概算額より2,721円安くなっていることに気付かなかったために、その額が平成28年度末時点で未使用のままで、次年度に繰り越しになってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の当初執行計画(申請書)に基づき、「消耗品費」(文房具、用紙類、プリンター・トナーなど)の一部に充当して使用する。
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