2016 Fiscal Year Research-status Report
モダニズムの大衆化と英米プリント・カルチャーの戦略の関係についての研究
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15K02346
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
金澤 哲 京都女子大学, 文学部, 教授 (70233848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出口 菜摘 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80516138)
山本 裕子 千葉大学, 文学部, 准教授 (80545377)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | モダニズム / プリント・カルチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者金澤は、日本アメリカ文学会関西支部例会において「ウィリアム・フォークナーと1930年代のプリント・カルチャー」と題する口頭発表を行い、当時モダニズム作品の出版に乗り出した各出版社の戦略およびそれに対する作家の対応を具体的に検証した。具体的には、ランダムハウス社が『ユリシーズ』アメリカ版を出版するに当たって採用した宣伝戦略とモダニズム文学との親和性を指摘する一方、フォークナーがランダムハウス社に移って最初に出版した『アブサロム、アブサロム!』に付した地図と年代記の意義を、出版社の戦略への協力とずらしという観点から解明した。 研究分担者山本裕子は、日本アメリカ文学発行の『アメリカ文学研究』に論文を発表し、フォークナーの第一作である『兵士の報酬』が英米での出版時にそれぞれ受けた扱いの違いを指摘して上で、英米プリント・カルチャーにおける「戦争神話」というものの存在を明らかにした。また写真家ウォーカー・エヴァンズが当時の写真週刊誌で果たした役割を踏まえ、エヴァンズを軸にフォークナーあるいはヘミングウェイと当時の雑誌メディアとの関係を解明した。 同じく研究分担者出口菜摘は、日本T.S.エリオット協会で口頭発表を行い、エリオットの詩作とリトルマガジンとの関係を検討し、モダニズムという文学運動におけるリトルマガジンというメディアの重要性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者および分担者2名が議論を重ねながら得た知見を、それぞれ論文あるいは学会発表によって公表している。それらの成果により、従来ほとんど指摘されることのなかった英米モダニズムとトランスアトランテックなプリント・カルチャーとの相互交渉の実態を解明しつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
計画最終年にあたる本年では、代表者金澤が日本英文学会全国大会においてウィリアム・フォークナーと1930年代のプリント・カルチャーについて口頭発表を行い、全体の総括を行う。研究分担者2名もそれぞれ、自己の進めてきた研究について適宜発表あるいは論文執筆を行い、代表者の成果を補足する。 その後、代表者金澤はフォークナーとプリント・カルチャーの関係をフォークナーにおける「作者」の問題としてとらえ直し、数年以内に著書の執筆を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の予定した海外調査が、申請時以後の資料の新たな出版により、必要性が薄れてきたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定した海外調査に代わり、新規資料の購入に充てるほか、成果公表のための国内旅費に充てる予定である。具体的には、10月に鹿児島大学で開催される日本アメリカ文学会全国大会へ参加するための旅費として用いる。
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