2016 Fiscal Year Research-status Report
アイルランド旅行記・小説・図像のインターアクション―1780年から1864年
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15K02350
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
中村 哲子 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (20237415)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アイルランド / 旅行記 / 小説 / 19世紀 / 挿絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(研究2年度目)は、1840年代、1850年代の旅行記および旅行ガイドとその挿絵に関する考察を軸に、同時代の小説、1810年代、1820年代、1830年代の旅行記と小説のテクスト検証を適時展開した。昨年度末に参加して成果発表を行ったFamine Conferenceは、今年は3月ではなく4月の開催となり、その機会に成果の一部を発表した。 具体的な研究実績は以下のとおりである。①1840年代、1850年代の旅行記および旅行ガイドのテクストおよび挿絵についての情報蓄積。②①に基づいて、テクストおよび挿絵の転用と複製の実態と意義についての考察。③ジャガイモ飢饉が、そのアイルランド性とあいまって、旅行記および旅行ガイドでいかに表象されているか、その地域性を視野に入れながらの考察。④ジャガイモ飢饉後の鉄道のインフラ整備と、旅行事情および旅行記等との関連性についての考察。⑤アイルランド中部から南部の地域性についての考察。⑥Anne Plumptreの旅行記、Sydney OwensonとMaria Edgeworth周辺の1810年代のテクスト検証。⑦1820年代、1830年代の旅行記(Caesar Otway、Henry Inglis, John Barrow等)および小説(William Carleton、John Banim)のテクスト検証。 以上、本年度は、ジャガイモ飢饉をキー・コンセプトとして旅行記、小説、図版の研究を展開し、北部や西部に加えて中部や南部の地域性への考察を深めた。それとともに、来年度の成果につながる基盤となるテクスト検証を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1840年代、1850年代の旅行記や旅行ガイド、およびその挿絵のインターアクションに焦点を合わせて、広範囲な刊本調査研究とテクスト検証がが展開できた。その成果の一部は、Liverpool University Pressから刊行される研究書に掲載予定の論文として公表されることとなった。また、前年度には北部・西部の地域を中心とした研究であったが、中部や南部に関する研究を推進できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、アイルランド国内の鉄道を中心としたインフラ整備と、旅行記および挿絵との密接な関係性が明確となってきた。同様の視点で1860年代のテクストを吟味する必要があるとともに、旅行記への注目が高まる18世紀末における状況との対比を意識した考察を進める。本研究が扱う時期を総体的に取りまとめる方向としたい。 また、1820年代、1830年代の旅行記と小説との関連性について、部分的にとどまっている考察を明確な視点で論じ、その成果発表を行う。 時代、地域、そしてジャンル横断の本研究がバランスのとれた対象作品を扱ったものとなるよう、調整を加えながら取りまとめを進める。
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Causes of Carryover |
研究成果発表として予定していたベルファスト(イギリス)での学会が、年度末の3月ではなく、4月開催にずれ込んだため、出費の一部を次年度使用とした。また、学会出張に合わせ、アイルランド国立図書館での刊本調査を予定し、必要な刊本を次年度入手する可能性が生じたため、次年度使用資金として確保した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月の学会出席のために事前支払ができない費目の支払いに使用する。また、入手の必要のある旅行記などの19世紀刊本を選定し、購入する。
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