2016 Fiscal Year Research-status Report
冷戦初期アメリカ文学研究・人種・ジェンダー・アクティビズム
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15K02354
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平塚 博子 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80407379)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 米文学 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1940年代から50年代の第二次世界大戦から冷戦初期に書かれたアメリカの作家の文学作品とアクティビズムを分析する。戦争と冷戦を通じて急速にグローバル化してゆくアメリカ社会のなかで、人種とジェンダーという問題をナショナルでインターナショナルな視点から見直した作家の作品とアクティビズムを、これまで取り上げられることが少なかったアフリカ系そして白人女性作家も含めて多面的に考察することで、この時代のアメリカの作家たちの文学作品とアクティビズムをハイブリッドな視点から検証する。さらに、この時期の作家たちの活動を50年代後半以降本格化様々な社会運動との連続性の中で捉えることで、この時期の作家たちが与えた影響の重要性を明らかにすると同時に、従来のアメリカ文学・文化研究に新たな視点を提供することが、本研究の目的である。 この研究目的を踏まえ平成28年度は、これまで行ってきたWilliam Faulknerなどのリベラル系男性作家の研究をまとめつつ、Ann Petryらのアフリカ系の女性作家の第一次資料の収集、精読、分析を行うことで、より多角的に1940年代から50年代のアメリカ文学作品とそのアクティビズムについて考察した。研究成果としては、「冷戦期南部小説としてのウィリアム・フォークナーの『館』」(第12回国際文化表現学会全国大会)と題した研究発表をおこない、それを「冷戦・グローバリゼーション:閉じられた南部の終わりの物語としてのウィリアム・フォークナーの『館』」(Soundings 42号)として論文にまとめた。 この他、3件の研究発表をおこない、これらの研究についても近いうちに論文としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、収集した資料の分析の結果を4つの研究発表という形にできたものの、それらすべてを論文という形にまとめるには至らなかった。しかし、平成28年度に収集した資料の分析は着実に進んでいるので、平成29年に行う資料収集とその分析と並行して、平成28年度にやり残した分析のまとめも、平成29年度に実施可能だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に関しては、28 年度に引き続きアフリカ系の女性作家の第一次資料の収集、精読、分析を進めるとともに、アフリカ系以外の女性作家の作家の第一次資料の収集、精読、分析を中心に行う。人種やジェンダーを含めた様々なバックグラウンドを持つ作家によって書かれた1940 年代から50 年代にアメリカで出版された文学作品、未出版の原稿、さらに公民権運動への関与などを含めた作家のアクティビズムついての歴史資料の収集、精読に努める。資料の中には、国内の図書館、Web などを使って比較的容易に入手できるものもあり、それらに関してはすでに作品その他の資料の収集、精読をすすめている。しかしこれらの資料のほかに未出版の原稿、手書きの原稿、書簡などに関しては、国内で入手困難なものも含まれており、それらについてはアメリカのニューヨーク公立図書館やボストン大学図書館、あるいはジョージア大学図書館等に赴き、複写、筆写で入手する。29 年度は28年度に分析できなかったLillian Smithらの作家に目を向けることによって、より多面的にこの時代の女性作家による文学作品とそのアクティビズムについて考察する。さらにこれらの作家達の作品に見られる人種やジェンダーの表象を分析するうえで、1940 年から50 年代にかけてのアメリカ社会、人種、ジェンダーに関してどのような言説が流れていたのかを知ることが重要だと考えられるので、新聞、雑誌、その他歴史資料に関しても、閲覧と分析を進める。
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Causes of Carryover |
平成28年度は夏期と春期の2回の海外での一次資料の調査及び資料収集および海外での学会の参加を計画していたが、学務の都合により春期の海外での調査および学会参加ができなかったため、旅費について予定通り予算執行できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度については、夏期と春期の2回にわたってボストン大学(またはニューヨーク公立図書館)とジョージア州立大学での一次資料の調査及び資料収集を計画している。 さらに29年度は冬期または春期に海外での学会の参加を予定しているため、平成28 年度に生じた次年度使用額と平成29年度の旅費を合わせて、これらの海外出張のための費用に充当する予定である。
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