2017 Fiscal Year Research-status Report
冷戦初期アメリカ文学研究・人種・ジェンダー・アクティビズム
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15K02354
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平塚 博子 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80407379)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 米文学 / ジェンダー / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1940年代から50年代の第二次世界大戦から冷戦初期に書かれたアメリカの作家の文学作品とアクティビズムを分析する。戦争と冷戦を通じて急速にグローバル化してゆくアメリカ社会のなかで、人種とジェンダーという問題をナショナルでインターナショナルな視点から見直した作家の作品とアクティビズムを、これまで取り上げられることが少なかったアフリカ系そして白人女性作家も含めて多面的でハイブリッドな視点から検証することが、本研究の目的である。 この研究目的を踏まえ平成28年度は、これまで行ってきたWilliam Faulknerなどのリベラル系男性作家やアフリカ系の女性作家の第一次資料の収集、精読、分析を行いつつ、リリアン・スミスらの白人女性作家の作品の分析を行った。またこれらの作家のジャーナリストや編集者としての経歴をもつことから、当時のメディアとの関連性の中で考察することで、より多角的な文学作品とそのアクティビズムについて考察を試みた。 研究成果としては、『ノンフィクションの英米文学』(仮題)と題した共著において、Smithの作品ととアクティビズムについての論考を執筆し、印刷中である。研究発表としては、ジェンダー史学会第14回年次大会で、 全体タイトル「大衆メディアにみる「総力戦体制」の表象と戦後における連続性」と題したパネルを行った。さらに、ギリシアのPANTEION UNIVERSITY OF SOCIAL AND POLITICAL SCIENCESにて、3月19日から26日まで滞在し、修士課程の学生向けのPrint Media and Popular Culture:Historical Perspectives: Theory and Practice(Postgraduate Seminar/Workshop)にゲストスピーカーとして招待され、講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、収集した資料の分析を、共著1編、研究発表1回、講演2回の形にまとめることができた。しかし、このほかに予定していた論文2本については、まとめることができなかった。主な理由としては、研究対象の作家とアクティビズムを考えるうえで重要だと考えられる、作家と当時のメディアに関する資料収集が、海外での資料収集が実施できなかったことを含め思うようにはかどらなかったことにある。しかし、国内で集められる資料については着実に収集をすすめていること、本年度は海外での資料収集も実施予定であるため、遅れは取り戻せると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29 年度に引き続きアフリカ系および白人女性作家の第一次資料の収集、特にこうした作家とメディアの関係性に着目しながら資料収集と精読および分析を進め、その文学作品とアクティビズムを考察していきたい。その理由としては、研究対象の作家の多くがジャーナリストや編集者としてアメリカのメディアにかかわっていたこと、これらの作家達の作品に見られる人種やジェンダーの表象を分析するうえで、1940年から50 年代にかけてのアメリカ社会、人種、ジェンダーに関してどのような言説が流れていたのかを知ることが重要だと考えられるからである。 資料収集については、国内の図書館、Web などを使って比較的容易に入手できるものもあり、それらに関してはすでに作品その他の資料の収集、精読をすすめている。しかし資料の中には国内で入手困難なものも含まれており、それらについてはアメリカのニューヨーク公立図書館やボストン大学図書館、あるいはジョージア大学図書館等に赴き、複写、筆写で入手し、分析を進める。 研究最終年の平成30年度は、これまでの研究成果をできるだけ多く発表していきたい。研究発表としては、平成30年8月にカナダで行われるThe 12th Conference of the International Federation for Research on Women’s Historyでのパネルの参加が決まっている。これ以外にも、国内外の学会において研究発表または論文として、研究成果の一端を発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度は夏期と春期の2回の海外での一次資料の調査及び資料収集および海外での学会の参加を計画していたが、学務の都合により春期の海外での調査および学会参加ができなかったため、旅費について予定通り予算執行できなかった。 平成30年度については、夏期または春期のどちらかにボストン大学(またはジョージア州立大学)での一次資料の調査及び資料収集を計画している。さらに平成30年度は夏期にすでに参加がきまっている国際学会ほか、国内外の学会に参加を予定しており、これらの海外および国内出張のための費用に充当する予定である。
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