2016 Fiscal Year Research-status Report
他者表象の変遷とその意味―オーストラリア文学の場合
Project/Area Number |
15K02358
|
Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
加藤 めぐみ 明星大学, 人文学部, 教授 (30247168)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | オーストラリア文学 / 他者表象 / マイノリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、本課題前に取り組んだ「オーストラリア文学にみる日本人表象」の研究を発展させ、「オーストラリア文学にみる他者表象」を行っている。 H27年度の研究成果(口頭発表、論文、書評)に引き続き、H28年度も成果の一部を公表した。具体的な成果の内容は以下の通りである。 ●口頭発表 2016年12月7日に国際学会Re-Imagining Australia: Encounter, Recognition, Responsibility、InASA Conferenceで“Literature and Responsibility: Letting Voices of Asylum/Non-asylum Seekers be Heard in Contemporary Australian Literature”により現代オーストラリア文学、言説に見られる難民の表象についての分析を報告、社会的問題への文学の関わり方について考察した。 ●共著『オーストラリア・ニュージーランド文学論集』(2017年3月)に「メンターを求めて―オーストラリアの女性離国作家たち」を掲載、マイノリティである女性作家が植民地オーストラリア社会とその文学に不足するメンターを他国や異文化に求めてオーストラリア文学の幅を広げ「他者」を取り込みつつ作品を生んできたことを歴史的に辿った。 ●H27年度口頭発表の成果論文 "Testimony of War: Memoirs and Fiction of the Pacific War"をInternational Auto/Biography Association の紀要Life Writingに投稿中である。 ●H27年度に引き続き、This House of Grief:The Story of a Murder Trial( Helen Garner著、Melbourne: Text Publishing, 2014)の翻訳を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年の計画のうち、1年目に引き続き2年目のH28年度には、マイノリティに関わる1次・2次資料を渉猟、講読、分析及びオーストラリアでの資料収集と研究者、作家、マイノリティ当事者との面談を計画通り行った。中でも、難民というマイノリティに特化し、研究者や当事者、支援者を取材した。(2017年8月キャンベラ)その成果が上記12月の国際学会での発表に繋がった。さらにこの調査により知り得た、難民の自分史及び支援方法をまとめた Hope: Refugees and their Supporters in Australia since 1947 (Ann-Mari Jordens著 Sydney/Canberra: Halstead, 2012)を、日本で翻訳刊行することになった。この出版のため、現在オーストラリア政府の助成金を申請している。本書の刊行は、現在グローバルなレベルで問われている難民問題を日本社会で考える上での一つの貢献になると考えられる。 文学に見る「他者」表象の対象を弱者、マイノリティを中心に考えているため、本研究の対象幅が広く、高齢者、性的マイノリティなどの全てを含むことは容易ではない。だが分析考察が浅くならないためにも、これまでの通り対象と作品を絞り、着実に成果公表に繋げることが肝要と考えている。また社会への研究成果の還元ともなる関連テーマの翻訳物刊行を同時に進め、This House of Grief:The Story of a Murder Trial( Helen Garner著、Melbourne: Text Publishing, 2014)の翻訳を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるH29年には、これまでの資料の分析を進め、8月にメルボルン、2月にキャンベラに赴き、補足資料の収集と確認をする。また昨年度までと同様に、研究者、当事者、支援者との面談や研究打ち合わせを行い、情報を収集する。これに基づいた資料分析と考察を行い、論文へと繋げる予定である。(投稿予定先:『オーストラリア研究』31号、『南半球評論』32号) この成果の一部をH29年度11月に開催される国際学会Foundation of Australian Studies in China (江蘇師範大学)において発表予定している。また先に述べたように、 Hope: Refugees and their Supporters in Australia since 1947 (Ann-Mari Jordens著 Sydney/Canberra: Halstead, 2012)及び This House of Grief:The Story of a Murder Trial( Helen Garner著、Melbourne: Text Publishing, 2014)の翻訳を同時に進め、成果の一部とする。
|
Causes of Carryover |
予定していた成果論文執筆用のコンピュータの購入を最終年度に回したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査及びコンピュータ購入に充てる。
|