2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02361
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石原 剛 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00368185)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リンドバーグ / 飛行文学 / アメリカ文学 / アメリカ文化研究 / 紀行文学 / 自伝文学 / 航空文化 / フロンティア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、テキサス大学図書館を中心としたアメリカでの現地調査を短期間ながら実施することが出来、日本では入手が難しい飛行文学関連の一次資料の踏査を実施した。特に、将来のアメリカの航空界を担う子どもたちの育成を目指す中、学校教育の場でいかにして航空界の英雄の物語が利用されていったのかといった問題について検討を行った。具体的には、大戦間期のアメリカで発行された中高の文学教科書を検証し、そこに掲載されている航空関連の物語を収集・検討した。 また同作業の中で、1920年代のアメリカ最大の英雄で、最も名の通った飛行家であるCharles A. Lindberghの影響力の巨大さを認識したこともあり、本格的なLindbergh研究に着手した。ただし、イェール大学図書館に保管されている膨大な量のLindbergh文庫を検討する時間的余裕がなかったこともあり、主たる研究として、アメリカ飛行文学の金字塔ともいえる Lindberghの自伝的回想記、The Spirit of St. Louis (1953年)を精読し、そこに刻み込まれた飛行を巡る様々なアメリカの物語を掬い上げていった。同作は、リンドバーグが人類初のニューヨーク―パリ間無着陸横断飛行の達成に至るまでの経験を綴ったピューリッツァー賞受賞作だが、特に、本作に見られる問題群、例えばフロンティアの物語の中に自己を位置づけようとする態度、飛行という行為に色濃く反映された宗教性、地上に展開する世界への空間認識、飛行に伴う時間感覚のズレ、さらには、飛行機というアメリカの発明品で新世界文明の中心地ニューヨークから旧世界文明の中心地パリに時空を超えて乗り込んでいくことの文化的意味などについて検討し、論文を完成した。同成果を成蹊大学で開催された「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」をテーマとした研究会で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テキサス大学で学校教科書を検討することにより、文学の授業での航空文学の利用状況を検討できたことは大きな前進と言えた。飛行家のリンドバーグのアメリカ文化における重要性を認識したこともあり、イェール大学図書館のリンドバーグ文庫での原稿の検証作業などを行いたかったが、時間的が余裕がなく断念せざるを得なかったことは残念であった。 しかし、その代わりとして、リンドバーグの代表作の精読を行い、研究成果をまとめて口頭発表という形で公表することが出来たことは大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
できるだけ早い段階でリンドバーグ研究を深化させるために、イェール大学図書館のリンドバーグ文庫での調査を実施したい。それと同時に、リンドバーグの妻でアメリカの航空文学を代表する作家でもあるアン・モロウ・リンドバーグの諸作の分析にも着手したい。研究代表者の見たところ、リンドバーグの諸作には特に妻アン・モロウの助力が多大な影響を与えていると考えられるので、原稿をつぶさに検討することで、具体的にどのような形で原稿が作成されたのか明らかにしたい。 また、ファンタジー系のアメリカ航空文学の開拓者の一人でもあったマーク・トウェインを研究する国際学会が2017年夏に開催され、研究代表者も同大会で発表することもあり、世界中から集まったマーク・トウェインの専門家と彼の著した気球小説に関して知見を交換する予定である。
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Causes of Carryover |
アメリカのイェール大学図書館が所有するリンドバーグ文庫の調査を実施するための費用として計上していたが、16年度9月より大学内で大きな責任をもつ役職に就いてしまったこともあり、現地調査を2月~3月に実施することが出来なかったことが原因。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカのイェール大学図書館が所有するリンドバーグ文庫の調査を実施するための費用として使用する予定。2018年2月~3月にかけて実施したい。
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Research Products
(1 results)