2016 Fiscal Year Research-status Report
19世紀から21世紀アメリカ文学に見る書く行為と読む行為の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
15K02369
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 恭子 立命館大学, 文学部, 教授 (90338244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 佳世子 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (10524514)
島貫 香代子 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 講師(非常勤) (30724893)
竹井 智子 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 准教授 (50340899)
高野 泰志 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (50347192)
伊藤 聡子 南山大学短期大学部, 英語科, 講師 (50411179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 精読 / 創作教育 / 英語教育 / 文学理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は精読の再考という視点から19~21世紀のアメリカ小説を研究することを目的としている。
「精読」は日本における英語文学研究の領域でしばしば用いられ、その歳、実証的・客観的・精緻な規範的研究手法という意味合いを伴うが、それが実際にどのような手順を踏み、なにを求めて、どのようなテクストを対象になされるのかについての共通の理解が得られていない。また、20世紀半ばにアメリカ南部で詩の評価手法として確立した新批評的精読技法と、その後、フランス由来の脱構築理論に端を発する文学理論に依拠した精読、そして20世紀終盤からのフェミニズムやマルクス主義に影響を受けた倫理的・歴史的文学批評の手法へと、アメリカ文学批評の潮流が変化するにつれ、「精読」が必ずしも客観的で解剖的なテクスト分析手法でないことも明らかになってきた。
そこで、本研究グループでは、ジュリア・クリステヴァが提唱した「間テクスト性」(intertextuality)を手がかりに、昔ながらの「オリジナルな傑作・古典・正典が精読に値する」という前提ではなく、「精読を誘うテクスト的・間テクスト的・文化社会的・教育的がある」という仮説のもと、3年度計画の2年目に当たる平成28年度は、黒人文学に表彰される「精読」、クイア理論を援用したテクスト内の「精読」、文学教育・読解力教育における「精読」、アメリカ文学における「精読」する作家像、と具体的に検証を進めてきた。その成果は以下のとおりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目である平成28年度は、1. 年2回の研究会、2. 講師を招聘した講演会を年1回開催、3.「精読」をキーワードに取り扱う題目を広げていく、ことを当初の目的としていた。
1と3については計画を大幅に上回る年間計5回の読書会を行うことができた。ハーレム・ルネサンスの黒人作家Jessie Fausetの短編 "Emmy" (_The Crisis_, December 1912) に表象された精読について黒人のエンパワーメントとパッシングの判別という側面からの考察、D. A. Millerが提唱する「過読」とも呼ぶべき "too close reading" の理論の報告、文学教育における「読むこと」についてElain Shawalter, _Teaching Literature_ (2003) を参照とした考察、英語圏および英語教育の読解力教育における「精読」の定義とその役割および文学研究との類似・相違点、ホーソーン作品に登場する「精読する作家」についての考察について発表を行い、従来「精読」の対象とされにくかったテクスト、クイア理論からのアプローチ、教育における精読の役割などに研究テーマを広げていった。また、本研究の成果をまとめる予定の論集のテーマや構成についてのディスカッションも進展した。
また2に関しては、連携研究者である杉森雅美フロリダ・ガルフコースト大学助教を招聘し、講演会「アメリカの大学における精読教育――現状と展望」を5月26日に行った。本講演会は一般公開された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本研究の最終年度に当たる。当初は海外の学会での発表と論集刊行を目標としていたが、申請時の経費計画より予算規模が縮小したため、論集刊行を最終的な目標とする。論集の刊行はH31年度を目標とする。最終年度は論集の基盤となる「精読/批評」の前提を論議しつつまとめる一方で、参加研究者のアメリカ文学研究各論について準備をすすめる。
平成29年度は立教大学文学部の舌津智之教授を7月に招聘しウィラ・キャザーの短編を精読する研究会を行う。また、昨年度同様、年3回程度の読書会を行う。必要に応じて研究補助の延長申請を行うとともに、出版申請の準備を始める。
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Research Products
(7 results)