2015 Fiscal Year Research-status Report
Missouri州Hannibalの1854年の電子版地図の再構築
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15K02370
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
和栗 了 就実大学, 人文科学部, 教授 (90230937)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マーク・トウェイン / 地図 / ミズーリ州ハニバル / トム・ソーヤの冒険 / アメリカ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1853年6月にミズーリ州ハニバルの家を出奔したマーク・トウェインが知っていたハニバルに一番近い地図が1854年に出版された地図である。 この地図に関して、ミズーリ州ハニバルで、2015年7月23日から25日にかけて開催された国際学会、Mark Twain Conference in Hannibal, Missouriにおいて、"The 1854 Map of Hannibal and Mark Twain"と題する学会発表を行った。その内容は、1854年のミズーリ州ハニバルの地図を詳細に読むと、マーク・トウェインの書いた『トム・ソーヤの冒険』(The Adventures of Tom Sawyer)の新たな読み方が生まれてくることを示した。 例えば、1854年にこの町には"African Church"が町の西側の丘の中腹にあった。このことは、町の北側の丘が「上流」の人々の居住区になり、西側の丘は非白人の居住区だったことを示している。J. Hurley HagoogとRoberta Hagoodによる歴史書The Storty of Hannibalによると、この西側の丘は「黒人街」であり、奴隷州であるミズーリ州に住む自由黒人はこの区域に住んでいたことが分かる。 そして、何より重要なことは、『トム・ソーヤの冒険』にこの地域のことは書かれていない。つまり、マーク・トウェインはこの地区に近づかなかったか、この地区のことを知らなかった可能性がある。トウェインは、黒人奴隷が白人の子供の友人だったと書いているが、そうでない黒人たちもいた可能性がある。 1854年出版のミズーリ州ハニバルの地図はマーク・トウェイン研究にとって極めて重要な資料である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この1854年のミズーリ州ハニバルの地図の重要性が、学会発表によって、世界中の何人かのマーク・トウェイン研究者に認識された。また、地元の歴史研究者の集まりのFriends of Historical Hannibalを通じて、この地図に興味をもつ数人の地元住民と情報交換を複数回行った。これにより、19世紀半ばの住民は、ミシシッピ河の水を直接飲んでいたことや、複数の弁護士が住んでいても法律問題はほとんど起きなかったことなど、1850年頃の町の息遣いを感得できた。今後もハニバルの生活に根差した研究を展開する。 さらに、将来的に『マーク・トウェインと地図』(Mark Twain on Maps、仮題)という論文集を作成する可能性も見えてきた。つまり、具体的に論文を執筆してくれる研究者や地元住民と信頼関係の構築ができた。口約束だが、この企画であれば出版すると、Hannibal Free Public Libraryと約束している。地元歴史研究者やマーク・トウェイン研究者、地元図書館と、緊密に連絡を取りながら、この方向で進みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
地図の描画の技術を持たない個人が地図を描くのはほとんど不可能だと分かったので、日本地図学会に入会し、地図作成の技術を持つ会社に地図の作成を依頼し、この地図に、いくつかの歴史書を基にした注釈を付する。その電子版を作成し、これを米国のいくつかのマーク・トウェイン研究機関に提供し、公開してもらう。これにより、この地図を活用した研究を活性化する。 2015年の学会発表をもとに、"Mark Twain and the 1854 Map of Hannibal"と題する論文を執筆する。さらに、進捗状況にも書いたとおり、マーク・トウェインと地図との関係をテーマとする論文集の準備をする。なお、論文集の作成は当初の計画にないことである。
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