2017 Fiscal Year Research-status Report
Missouri州Hannibalの1854年の電子版地図の再構築
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15K02370
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
和栗 了 就実大学, 人文科学部, 教授 (90230937)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / マーク・トウェイン / 19世紀 / 地図 / 西部 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度にMissouri州Hannibalを、科研費と個人研究費を利用し、2度訪問し、調査し、1854年の地図の正確な、原寸大の複写を入手した。1854年の地図はもともと全域版と部分版の2種類あり、今回はその全域版の原寸大の複写を入手した。これにより、原寸大のHannibal市全域地図の復刻が可能となった。 一方、Mark Twainの『トム・ソーヤの冒険』などの作品の精読により、TwainがHannibalを舞台とした作品を書く際に、具体的事実を重視した事が分かった。当初予想していたよりも事実を重視していた。これは、1853年にTwainがHannibalを出奔以後にも、Hannibalに関する情報をかなり詳しく提供され続けていたことを意味する。 他方、特に人物の創造に関して、事実とはかなり異なる部分があり、この部分の検証が必要となっている。つまり、小説中の登場人物のモデルとなった人物が実はどのような人物だったかを検証する必要が生じている。典型的な例は、『トム・ソーヤの冒険』のインジャン・ジョーと、そのモデルになったジョー・ダグラスの間の乖離である。 19世紀後半のMissouri州Hannibal周辺地域の地図を入手し、比較検討を行った。その結果、一部の町よりもHannibalが美しく地図に描かれていることが分かった。この時代の多くの地図が入植者を募集するためのものであったことを考慮すると、Hannibalがより理想的に描かれていた事がわかる。 これを根拠に、西部の理想化は実証しにくいが、西部の開発途上の市町村を、鉄道などの近代文明と農村的雰囲気の共存する理想郷として表現したいという願望があったと言える。Twainはこうのような願望と、真実を伝えたいという芸術家としての欲求を持っていた。その整合しにくい二つの望みが、彼の作品の地図と登場人物の創造に表現されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全域版の地図の原寸大の複写を入手したことで、これを電子版に書き直すこと、その地図のすべての細部を電子化することが可能になった。 電子自体は専門の業者に依頼し、作成してもらい、さらに必要な情報を書き入れる。 トム・ソーヤを中心とする物語郡は既にすべて精読しており、地図上に何を書き入れるべきかを検討中である。 ただし、どれだけの情報を書き入れていくか、検討が必要である。書き入れすぎると解釈になり、電子媒体での出版方法も十分考慮し、使ってもらえる電子地図を作成する。
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Strategy for Future Research Activity |
情報が何も書き入れられていない地図と、情報の書き入れられた地図の二葉を用意し、公開する必要がある。 Mark Twainが地図をどのようにとらえていたのかという根本的な課題に目を向ける段階にある。彼が親しんだロンドンの地図やネヴァダ準州の鉱山地域の地図、さらに世界地図も準備しながら、旅行記や、トム・ソーヤの登場しない作品における地図をも参照しながら、作家Twainにとって地図は何だったかを、論文として執筆、2018年度内に出版する。 将来的には、生涯移動し続けた作家Twainの全体の地図を完成させたい。
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Causes of Carryover |
旅費のうち、個人負担額を多くしたことが理由である。
これを地図作成会社依頼する際の費用とする。
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