2016 Fiscal Year Research-status Report
亡命文学と神話に関する基礎的研究:フォンダーヌとヴォロンカを中心に
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15K02376
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩津 航 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (60507359)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フランス文学 / 神話 / ユダヤ人 / ルーマニア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究成果として、研究発表1本、研究者招聘1件、論文1本が挙げられる。 まず、平成28年9月25日には、世界文学・語圏横断ネットワーク第5回研究大会(立命館大学)で「ルーマニア出身ユダヤ系フランス語詩人にとってのパリ:フォンダーヌとヴォロンカの場合」と題する口頭発表を行った。会場での質疑応答において、研究代表者の提示した概念が議論の中心になるなど、学会への知的貢献を果たした。 平成28年10月18日には、フォンダーヌ研究の第一人者をThe Johns Hopkins University(USA)から招聘し、金沢大学角間キャンパスにて、「フォンダーヌ:深淵の縁を歩く人」と題する講演を実施した。研究代表者はフランス語で行われた同講演を日本語に通訳したほか、聴衆の理解を助けるための入念な解説を講演前に実施し、講演会の内実を高めた。聴衆との質疑応答において、日本におけるフォンダーヌ理解の問題点を把握することができたのも、大きな収穫である。また、かほく市立西田幾多郎哲学記念館を訪ね、館長および学芸員とともにフォンダーヌの思想と禅をめぐって議論し、通訳を担当した。そのほか、ルーマニア文化や神話についても、活発な議論を行った。 平成28年12月刊行の共著『文学海を渡る:〈越境と変容〉の新展開』に単著論文「ユリシーズ神話の現代性:バンジャマン・フォンダーヌを中心に」を発表し、研究成果を広く社会へ提示した。同論文では、前年度の文献調査で収集した一次資料を活用し、神話を用いたフォンダーヌの『ユリシーズ』の文学史的意義を解明した。 さらに平成29年2月には、別用件でフランスに渡航した機会を活用し、文献調査および研究面談を行い、次年度以降の研究へつながる準備作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に挙げた海外研究者招聘を実現し、国際的な研究ネットワークの構築を固めた。また前年度の研究成果を学会発表や論文刊行を通じて、広く社会へ発信することも実現した。計画書に挙げたアルゼンチンへの文献調査は次年度に持ち越しになったが、フランスでの文献調査を実施し、研究者との交流も実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
The Johns Hopkins University から招聘した海外研究者との議論によって、フォンダーヌ研究におけるアルゼンチンの重要性を再認識し、調査すべき文献についても示唆を得た。さらに、ヴォロンカについても、2016年度に未刊行の日記がシンポジウムで紹介されるなど、ルーマニアでの文献調査の重要性に気づかされた。ヴォロンカ研究を推進するうえで、詩人の故郷ブライラと周辺地域に関する知見が求められることも明らかになった。こうした研究の進捗を受けて、今後の研究調査の方向性を修正する必要がある。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由として、研究計画で2月から3月にかけて予定していたアルゼンチンでの文献調査が、大学業務の日程変更のために実施できなくなったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、アルゼンチンとルーマニアでの資料調査の旅費として使用する。アルゼンチンでは、ブエノススアイレスの国立図書館でのフォンダーヌ関連資料の調査を予定しており、ルーマニアではブカレストの古書店を中心にヴォロンカ関連の書籍収集に努める。また、国内での学会への参加旅費や研究成果の発信にかかわる通信料、資料購入費にも使用する。
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