2016 Fiscal Year Research-status Report
『失われた時を求めて』後半の歴史的背景と創作に関する総合的研究
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15K02378
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 一義 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (30119870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プルースト / 失われた時を求めて / 歴史的背景と創作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランスの作家プルーストの長篇小説『失われた時を求めて』のうち充分に研究が深められていない後半部(第4篇『ソドムとゴモラ』、第5篇『囚われの女』、第6篇『消え去ったアルベルチーヌ』、第7篇『見出された時』)に対象を絞り、それがどのような政治、社会、文化などの歴史的背景をもとに成立したものか、それらの事象が作中でいかなる有機的機能を果たしているかを総合的に調査、考察して、プルースト文学の独自性と普遍性の秘密を解明するとともに、その成果を『失われた時を求めて』後半部の翻訳・注解にて一般読者に公開することを目的とする。 平成28年度は、平成27年度の調査研究の成果を踏まえたうえで、『失われた時を求めて』の第5篇『囚われの女』を中心に、ひきつづき『失われた時を求めて』と関連作品、『プルースト書簡集』、フランス国立図書館所蔵の未発表資料などを活用して、本作にあらわれた政治や社会や文化に関する事象を調査した。『囚われの女』以降の篇は、作家の死後出版であって、本文校訂が問題となる。この篇の原稿、タイプ原稿なども綿密に調査し、当時の歴史事象と照合して、その執筆時期や意義を解明することも試みた。 そのうえで、前年度までの考察を盛りこんだ論考を公刊し、本年度を中心に調査考察を進めた『失われた時を求めて』における歴史的背景と創作との関係についての研究成果を、プルーストに関するシンポジウムで発表するとともに、『囚われの女』の翻訳・注解に採り入れ、日本の読者に公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究条件に恵まれ、ほぼ予定どおりに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も申請書に記した研究計画・方法に従い、鋭意、調査研究を進める。
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