2015 Fiscal Year Research-status Report
ポール・ヴァレリーのエクリチュールにおける知性とエロスの相克
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15K02380
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松田 浩則 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (00219445)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エクリチュール / 知性 / エロチシズム / 書簡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ポール・ヴァレリーにおける知性とエロチシズムとの相克を、とりわけカトリーヌ・ポッジとのかかわりの中で究明することにある。 本年度はヴァレリーとポッジとの往復書簡の読解を研究の中心に据えつつ、ポッジとの関係の中で、「ムッシュー・テスト」に端的に代表されるようなヴァレリーの知性絶対主義がどのように揺らいだのか、それによってヴァレリーのエクリチュールにどのような変化が見られたのかを解明しようとつとめた。この点に関しては、まだ論文の形での発表はなされていないが、こうしたポッジ経験の分析結果をふまえつつ、2016年1月30日、日本ヴァレリー研究センター(一橋大学)で、ヴァレリーがジャン・ヴォワリエ(本名:ジャンヌ・ロヴィトン)に送った書簡集に関する研究発表を行った。発表原稿はセンターの電子版紀要に掲載される予定である。 パリの国立フランス図書館で一週間ほど資料の収集を行ったが、パリで起こった連続爆破事件の影響もあって、収集期間が予定より短くなってしまったことは否めない。ただ、必要な資料は着実に入手しているので、近日中にまとめる予定である。 パリ・ソルボンヌ大学のミシェル・ジャルティ教授を中心に進められているヴァレリーの『カイエ』の新しいエディション作り(ソルボンヌ・プロジェクト)に参画し、知性とエロチシズムとの関係から考察を加えた資料をジャルティ教授に送った。また、ヴァレリーとアンドレ・ジッド、ピエール・ルイスとの書簡の翻訳にも関わった(2016年5月に『三声書簡』として発刊予定である。水声社)また、ジャルティ教授による『ヴァレリー評伝』の翻訳にもかかわった(2016年秋発刊予定。水声社)。いずれの翻訳にも、本研究の目的が強く反映されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パリで予定していた書簡等の情報収集が、パリで起きた連続爆破事件のため、不十分な形で切り上げざるを得なくなったが、それでもおおかた重要な資料には目を通すことができたので、研究が遅れているとの認識はない。今年度、治安の安定状況を見据えつつ、引き続きパリでの資料収集にあたる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、パリでの資料収集活動を進めつつ、論文執筆へと研究を進めていく所存である。今年度は集められた資料をもとに、ヴァレリーがポッジとの関係を期に始めた対話形式の作品の分析を知性とエロチズムとの関係から分析していきたい。『魂と舞踊』などがその中心に据えられる予定である。
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Causes of Carryover |
2015年1月に起きたパリでの事件、2015年11月に起きたブリュッセルでの事件などにより、長期にわたって資料収集の目的でヨーロッパにとどまる状況ではなくなった。そのため、パリでの滞在期間を1週間程度に短くせざるを得なかったし、また、新たな渡航を計画する状況にもなかった。そのため、不本意ながら、予算を使い切れないという事態に追い込まれてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
パリのみならずヨーロッパの治安の安定化を見据えたうえで、パリの国立図書館での資料収集を昨年度より長めに計画する予定であるし、また、昨年度は参加を取りやめざるをえなかったパリでのシンポジウムや研究会(ITEMを中心としたグループとパリ・ソルボンヌ大学教授を中心とするグループ)での発表も計画中である。
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