2017 Fiscal Year Annual Research Report
Intellect and eroticism in Paul Valery
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15K02380
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松田 浩則 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (00219445)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 官能性 / 書簡 / エクリチュール |
Outline of Annual Research Achievements |
1920年から28年までの間、恋愛関係にあったポール・ヴァレリーとカトリーヌ・ポッジとの間でどのような手紙がやりとりされていたのか、またその間、ヴァレリーやポッジは自らの日記にどのような考察を書き留めていたのかといったテーマを中心に研究を進めた。この研究を通して、互いの自我と自我との共同体を作ろうとする様々な試みを二人のエクリチュールを通して分析した。とりわけ、ポッジが南フランスのヴァンスに購入した「コリネット」という名の別荘こそは、それぞれオルフェウスとユーリディケに擬せられたヴァレリーとポッジの天上的なエクリチュール生成の場と互いに認識されていたことを明らかにした。また、「二人で一人、一人で二人」という親密な状態の生成のために、互いが既存のフランス語を自分用に捻じ曲げ、文法規則を無視した書き方をしている点も指摘することができた。 3年に及んだ本研究の最大の成果は、ポッジの遺作『魂の肌』に彼女とヴァレリーを結び付けた熱力学の第二法則ならびにネグエントロピーの概念の応用・展開がみられることを突きとめた点にある。またヴァレリーのよく知られている「四つの身体」に関する概念もまたポッジとの共同作業の成果に負うところが大きいことを明らかにすることができた。 この間、2017年1月28日のヴァレリー研究会(東大駒場)でポッジとヴァレリーの書簡集La flamme et la cendre(Gallimard, 2006)に関する書評を行ったが、これは『ヴァレリー研究』第7号(2018年2月)に掲載された。また、2017年10月22日に日仏会館で行われたシンポジウム「芸術照応の魅惑3-ヴァレリーにおける詩と芸術」で「ヴァレリーとポッジ - エクリチュールの相克」という題目で講演を行った。この講演をもとにした論文は『芸術照応 ヴァレリー論集』(水声社、2018年6月)に掲載予定である。
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