2016 Fiscal Year Research-status Report
17-18世紀フランス文学における「恋愛論争」の間テクスト的研究
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15K02382
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤原 真実 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (10244401)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 間テクスト性 / 恋愛地図 / 美女と野獣 / 恋愛論争 / 作者性 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文≪Le "sacre commerce" selon Robert Challe: Bossuet, Richard Simon et les Difficultes≫(2017年3月)では、「神聖なる通商」という語を契機に、ロベール・シャールの『宗教についての異議』とアウグスティヌス、ボシュエを初めとするカトリック説教師らの著作との間テクスト性を発見し明らかにした。 ≪L’anonymat et la paternite de l'oeuvre en 1713≫(2017)では、17-18世紀の作者のありようと、複数の作者が共有し、共同で紡ぎ出すテクストのありようを明らかにした。 ≪ Les Difficultes sur la religion et Le Militaire philosophe ≫(2016)では、20世紀以降、ロベール・シャールの著作とされている『宗教についての異議』とその翻案『軍人哲学者』のテクスト成立の経緯について、翻訳者の視点から問題点を指摘した。 口頭発表≪Quelques hypotheses sur une redactions a plusieurs mains du 4eme Cahier des Difficultes [...]≫では、20世紀以降にシャール著と断定された著作に複数の手が入っている可能性を指摘した。 2016年10月には研究集会『フランス文学と愛』を企画・開催し、17-18世紀フランス文学における「恋愛論争」の起源とその派生について、グロワザール、ベルクマン両氏から重要な専門的知見を得た。さらに両氏のフランス語による論文を藤原が翻訳して『人文学報』(2017年3月)に掲載した。 17-18世紀フランス文学における「恋愛論争」の重要な結実であるオリジナル版『美女と野獣』(2016年12月、白水社)を翻訳・発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バロック小説群および妖精物語群からトポスを抽出・分析する作業は、思うように進んでいないのが現状である。その一方で、本年度においては、2016年10月に国際研究集会『フランス文学と愛』を開催し、研究課題の重要な部分である、「恋愛論争」の文学的起源の一つであるプラトンとプラトン主義における愛の概念について、また18世紀小説(プレヴォーとルソー)における「恋愛論争」の展開について、重要な知見を得、それを申請者が翻訳して大学の紀要に発表することができた。これは本研究に大きく資する成果であった。また、ロベール・シャールに関係する3本の欧文論文においても、テクスト相互関係性、当該の時代の作者とテクストのありようについて知見を深めることができ、本研究の基盤を堅固にすることができた。したがって、以上を総合すれば、本研究はおおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでどおり、バロック小説群および妖精物語群からのトポスの抽出および分析の作業を行い、年度末に論文としてまとめることを目指す。また10月末にシルヴァン・ムナン氏とジュヌヴィエーヴ・アルティガス=ムナン氏を招聘して国際研究集会を開催し、17-18世紀フランス文学における文学のありよう、テクストのありよう、間テクスト性、セリーなどの問題について討論し、論文として発表する予定である。さらにロベール・シャールに関係するテクストの相互関係性、当該の時代の作者とテクストのありようについても研究を続け、2018年3月にパリ、ソルボンヌ17-18世紀フランス文学研究所内OBVILにおいて研究報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度にパリ・ソルボンヌ第4大学名誉教授シルヴァン・ムナン氏と、パリ大学名誉教授ジュヌヴィエーヴ・アルティガス=ムナン氏を招聘して、比較的大規模な研究集会を開催する予定で、そのために支出が増えることが予想されるため、本年度においては、支出をできるかぎり抑えて次年度に使えるようにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度10月23日から11月3日にかけて、パリ・ソルボンヌ第4大学名誉教授シルヴァン・ムナン氏と、パリ大学名誉教授ジュヌヴィエーヴ・アルティガス=ムナン氏を招聘し、18世紀文学研究におけるセリー(間テクスト性)的アプローチをはじめとする、本研究に関係するテーマについて研究集会や講演会を開催する。その旅費として同時に、引き続き申請者はフランスにおける資料収集および研究発表
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Research Products
(8 results)