2015 Fiscal Year Research-status Report
フランス飲食文化の受容を軸とした日本の飲食表象空間の編成とその社会的意味の研究
Project/Area Number |
15K02392
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福田 育弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70238476)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 飲食 / ワイン / 受容 / 変容 / 洋酒 / ビール / 表象 / 食卓 |
Outline of Annual Research Achievements |
長野県および栃木県のワイナリーに数度にわたる取材を行い、両県のワインの生産と普及、およびそれに関連してフランス料理の展開状況を調査した。さらに、明治から昭和初期までに開業した外国人向けホテル(軽井沢万平ホテル、箱根富士屋ホテル、日光金谷ホテル、横浜ホテルニューグランド)において、日本のフランス料理の受容と変容を調査した。 これらの調査をもとに、多数の関連文献や資料を読み込んで、研究成果を以下の著作と論文にまとめた。 (1)『新・ワイン学入門』、集英社インターナショナル、2015年12月、224頁、(2)近代日本における飲食の表象空間考察への助走――ワインとビールの受容と変容――」、『学術研究 人文科学。社会科学編』、第64号、早稲田大学 教育・総合科学学術院、2016年3月、283-310頁。 (1)は、フランスワインの歴史を悪い自然条件ゆえに人間が努力しその結果いいワインができるという視点から概括し、日本でもいいワインができる可能性を明確にしたうえで、日本でのワイン受容が成熟し、いいワインが作られだしたこと、さらにワインのある食卓が女性主導で進行し、日本人のライフスタイルを変えつつあるこを明らかにした。フランスワインの歴史への独自の視点を日本のワインの可能性に関連させた内容は、従来のワイン関連本やワイン研究書にはない独自性であり、研究の成果でもある。 (2)は、洋酒の受容と変容を、それらがおりなす表象の布置ないしシステムこそ重要という点から考察し、西洋で食中酒のワインが甘口化して食外酒となり、それとともに西洋で食外酒であったビールが日本では食中酒になった経緯を、豊富な資料から明らかにした。生産ではなく受容にフォーカスし、飲食物単体ではなく関係性(システム・布置)における社会的表象(イメージと暗黙の価値づけ)を重視する分析視点は、これまで飲食文化研究にはなかった視点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに研究が、著作1冊、論文1本となって、具体的な成果を上げているから。 今後、これらたの成果をもとにより深化が確実に予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をふまえ、さらにフィールドワークを重ね、多様な一次史料に当たり、日本におけるフランス料理とワインの受容と変容をより深く考察する。 とくに、2016年度は研究休暇なので、5月にはソルボンヌ大学地理学科の飲食のマスターコースの招聘をうけ渡仏し、フランスの飲食を専門とする文化地理学者とのシンポジウムや日仏の飲食文化比較に関する講演やセミナーを行うことが決まっている。 また、フランスでは、日本関連のワインおよび日本に関するフランス料理の資料や著作の閲覧・読解も期待でき、研究の深化に役立つはずである。 2016年度は、本研究のさらななる飛躍の年となるこは、確実である。
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Research Products
(2 results)