2016 Fiscal Year Research-status Report
ビュフォン『博物誌』における人類学的思考の意義――ド・ブロスとの比較検討を基点に
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15K02398
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大橋 完太郎 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (40459285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ビュフォン / 博物学 / 自然史 / 植物園 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)今年度は基礎的な読解・解釈の土台となる文献資料を収集・精査するため、パリの国立図書館、およびブルゴーニュ地方の都市ディジョンにおけるブルゴーニュ大学図書館、およびディジョン市文書館にて資料収集をおこなった。成果としては大きく分けて以下の2点があげられる。第一に、ブルゴーニュ地域の産業市の資料を解読することによって、近代初期においてディジョン近郊の冶金、とりわけ製鉄術の果たした歴史的重要性が地誌的な意味で明らかになり、そこから、ビュフォンが製鉄所を該当地域に設けた地政学的な意味について、おおよその意義を把握することができた。第二に、従来まであまり取り上げられることのなかったディジョンの知識人であり人類学的著作を書いたド・ブロスの思想形成の軌跡を明らかにすることによって、18世紀ヨーロッパの知識社会および学問界において彼の民俗学的思考が果たしていた知的な意義とその影響について今後の調査に反映する基礎的な見地や知識を獲得することができた。 2)昨年度および今年度の国内で行った調査をもとにして、ビュフォンの博物学形成の初期にイングランドの経験論哲学および博物学が与えた影響について考察した論考を、上記の資料や先行研究の成果も加味した上で論文を一編執筆した。該当論文は「ビュフォンと英国(1):1730年代までの知的動向」と題され、査読を経たのちに、ガーデン研究会から2017年3月に発行された『ガーデン研究ジャーナル』上に発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付初年度の夏に所属先の変更(異動)があったため、本来予定していた初年度夏期の資料調査が遅れたことが理由である。前年度におこなうはずであった基礎的資料の整備については、今年度の調査滞在によっておおよそ成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のメインテーマのひとつである、ド・ブロスによって進められた民俗学的研究とビュフォンの製鉄術や博物学との関係について、ディジョン地方やパリでの資料収集に基づいてさらに明確な関係性を見いだせるということが現在までのところ判明している。この方向性で本研究をもう一段階進めることによって、今日まで人間関係に基づく影響関係しか考察されてこなかった両者が、ある程度必然的な思想的相互影響のもとで互いに形成されてきたことを明らかにすることができると考えられる。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属機関変更により、初年度の夏期に予定していた調査滞在が次年度以降に延期されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本来計画されていた資料調査は今年度終えることができたので、次年度に予定していた海外資料調査の期間を延長することで、上記の理由によって生じた研究上の遅れを取り戻すことができると考えている。
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