2017 Fiscal Year Research-status Report
(ポスト・)ポストコロニアルな国際情勢を反映する現代ドイツ文学の研究
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15K02400
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
副島 美由紀 小樽商科大学, 言語センター, 教授 (20226707)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドイツ現代文学 / オーストリア現代文学 / ポストコロニアル文学 / 植民地研究 / 旧ドイツ領植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
①≪国内における資料収集および研究活動≫ 本来はH29年度の計画として、中国における旧ドイツ領である膠州湾租借地に関するポストコロニアル文学研究を挙げていた。しかし、前年度に参加したゼミナールおよび国際シンポジウムの内容を書籍の形で出版する計画が持ち上がり、2件の発表を改良して論文にする必要があった。その2件とは、まずドイツ領旧南洋に関するポストコロニアル批評の動向に関する研究、そして「世界文学」という最近の文学的カテゴリーとの関連におけるドイツのポストコロニアル文学研究の位置づけに関する研究である。これらの論文執筆に時間を要したため、本来計画していたG・ザイフリートに関する作家研究をH30年度に先送りする結果となった。が、膠州湾租借地に関する文学作品の研究としては、まずウーヴェ・ティムの『半影』を対象として、北海道独文学会において研究成果を発表した。また、トーマス・シュタングルに関する作家研究もさらに深化させ、「世界文学」という概念との関連において論文を執筆し、雑誌「オーストリア文学」に掲載することが出来た。文学理論に関する研究としては、ポストコロニアル文学がインターカルチュラル文学と共にグローバル時代の文学として共通の理論的磁場を背景に語られるようになったことを批判的に確認することが出来た。結果的には、1件の学会発表と3本の論文執筆(内1本は出版計画中)により、H19年以来続けてきた研究を発展・深化させて公表することが出来、有意義な研究年間となった。
②《外国における資料収集その他》 前年度と同様、「第17回ベルリン国際文学祭」、およびベルリンで同時期に行われた複数の作家朗読会に参加し、約2週間の期間を通じてドイツ現代文学の動向に関する情報収集を行うことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にも記述した通り、研究は本来計画した通りに進まなかった点もあるが、それは研究発表や論文執筆の依頼が予想外に多く、なるべくその期待に応えるべく計画を変更した結果である。研究成果の発表も研究活動の重要な要素なので、研究計画に遅れが出ていると言うよりは、研究発表という業績を予想以上に早く挙げることが出来ている、と考えるべきであろう。また、本来計画していた作品研究については、すでに9月に韓国で行われる国際シンポジウムの発表依頼が来ており、現在その準備中である。従って総合的に見れば、全体的な研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は研究計画における最後の年であるが、これまでと同様、以下の研究を行っていくつもりである。 ①《国内における資料収集および研究活動》理論と作品の2本立ての研究となることは従来通りである。まずは特定地域の研究として、膠州湾租借地に関する文学研究を続けて行う。次いで、再度旧ドイツ領アフリカに着目し、最新の先行研究があればそれを踏まえ、H19年以来研究対象としてきたドイツのポストコロニアル文学を総括的概観とも言えるような仕事も出来れば行いたいと考えている。作品研究としては、H・C・ブーフ、C・ハーマン、L・ベアフス等が視野に入ってくるであろう。理論的研究としては、グローバル時代の文学としてのポストコロニアル文学の位置づけに関し、さらなる動向について研究を行って行きたい。 ②《外国における資料収集その他》 従来と同様、「ベルリン国際文学祭」に参加することにより、ヨーロッパおよびドイツにおける現代文学の動向に関する情報収集を行う予定である。必要に応じて行う図書館における文献蒐集についても従来と同様である。
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Causes of Carryover |
書籍購入の際、結果的に年度を越して購入した洋書が2,3あったため、未使用額が生じた。それらは翌年度すぐ購入したため、次年度の研究費と合わせて執行する方が有効活用出来ると考えた。 (使用計画) 書籍購入費として執行予定である。
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Research Products
(3 results)