2015 Fiscal Year Research-status Report
現代ロシア文化における文学と視覚芸術の相互的影響の解明
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15K02404
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鴻野 わか菜 千葉大学, 文学部, 准教授 (50359593)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロシア文学 / ロシア美術 / ロシア文化 / 現代美術 / 現代詩 / 象徴主義 / 比較文化 / 児童文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 ロシア象徴主義文学研究:象徴主義作家アンドレイ・ベールイの小説に関する研究を進め、8月上旬には来日したベールイ博物館館長モニカ・スピヴァク氏らと共に千葉大学でロシア文学の公開セミナーを開催し、国際学会ICCEESでベールイのパネルを組織し、ロシア語で発表を行った。この発表に基づくロシア語論文は、ロシア人文大学から出版された論文集に掲載された。 2 モスクワ・コンセプチュアリズム研究:元ソ連非公認芸術家イリヤ・カバコフの芸術作品とテクストについての研究を進め、邦語論文を執筆し、論文集に掲載された。8月中旬から9月までカバコフの未公開ドローイングとテクストの調査を行い、写真撮影、データ収集、作家への聞き取りを行った。 3 ロシア現代美術研究:5月上旬に、レオニート・チシコフの回顧展をエカチェリンブルク美術館で調査し、ウラジーミル・ナセトキンの未発表の初期作品をニージニー・タギル美術館の保管庫で調査した。エドゥアルト・クベンスキーと、アレクサンドル・ポノマリョフら現代作家の動向について討議した。7月にはロシアの現代作家ナセトキンとターニャ・バダニナの来日に伴い、インタビューを行い研究のための資料収集を行うと同時に、新潟県での芸術祭参加のための補助を行った。1月にはニキータ・アレクセーエフに取材を行った。これらの成果の一部として3本の論考(ポノマリョフ論、バダニナ論、アレクセーエフ展覧会評)を執筆し、2本の邦語論文が論集に掲載され、1本のロシア語論文が出版社に受理された。 4 ロシア現代詩研究:ロシア現代詩、ロシアにおける俳句、歌詞の分析を進め、ロシアにおける詩の朗読会の新しい動向について研究し、主催者に取材を行い、論考を準備中である。 5 比較文化研究:日本文化研究者アンナ・パーニナ氏と共同研究を行い、千葉大学にて公開セミナーを開催した。日露児童文化・絵本の比較を行い、研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ロシア象徴主義文学・現代文化についての研究を進め、国際学会での口頭発表、論文、展覧会評等によって、研究成果を発表した。 ロシア文学・比較文化・現代文化について、作家、ロシア人研究者らと討議を行い、国内でも公開セミナーを開催し、連続市民講座に参加し、研究の成果を公開した。 ロシア現代美術研究の成果をいかして、日本の地方自治体の芸術祭へのロシア人アーティストの招聘、コーディネート、資料作成に携わり、研究の成果を社会に還元することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現代ロシア詩(歌詞を含む)の研究、翻訳を進め、論文を執筆する。各国の現代詩との比較も行う。 現代ロシア美術の研究を進め、美術家のテクスト(カバコフのテクスト、ポノマリョフの詩、アレクセーエフのテクスト等)の分析も行う。作家の居住地(ロシア、アメリカ等)で作品調査を行うが、作家の健康状態等の事情を配慮してもし可能であれば、日本の民間伝承をテーマに創作してきたロシアの作家を日本に招聘し、長野・京都等で共にフィールドワークを行い、「現代ロシア美術における日本の主題」についての研究を進める。招聘が不可能な場合は、作家の居住地での取材を行う。 日露児童文化の比較を行い、海外の絵本が日本語に翻訳される際の文体、日露を中心とする絵本・児童書のテーマや構成の相違について調査を進める。また、児童書・絵本の制作に関わってきたロシアの詩人・作家について資料を収集し、各国の状況と比較する。
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