2017 Fiscal Year Research-status Report
ソヴィエト文化における視聴覚メディアと文学テクスト
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15K02405
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 雅子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (90749152)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | ロシア文学 / ソ連文化 / メディア文化 / ラジオ / ブルガーコフ / ウクライナ / 日本表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、ロシア革命後から1930年代までのラジオ文化が、同時代の文学テクストでどのように描かれているか分析を行った。特に、ブルガーコフの諸作品を軸に、フレーブニコフやマヤコフスキイ、ザミャーチン、カターエフの文学テクストを取り上げることで、当時の社会におけるラジオ受容の多様性について論じた。この研究はロシア語の論文としてまとめ、アルメニアのエレヴァンで刊行された国際学会報告論集『ミハイル・ブルガーコフ ロシア文学と国民文学』に掲載された。 また、ブルガーコフ作品における視覚メディアの影響研究の一環として、特にブルガーコフの故郷キエフに縁がある宗教画について、キエフのブルガーコフ文学記念博物館とヴェルナツキイ・ウクライナ民族図書館で調査を行った。そして、それらの宗教画とブルガーコフの代表作『巨匠とマルガリータ』の創作との関わりについて、2017年11月1日に東京外国語大学で開催された国際シンポジウム「文化の汽水域~東スラヴ世界の文化的諸相をめぐって~」で報告を行った。その後、シンポジウムでの議論を踏まえて、論文を執筆した。この研究成果は、国際シンポジウムの報告集に掲載された。 さらに、平成29年度の研究計画に従い、冷戦時代の視覚メディアの考察を行った。ソ連時代に多くの読者に読まれていた風刺雑誌『鰐』を取り上げ、風刺画の中で日本がどのように表象されていたかという点について、東京大学の情報学環図書室とモスクワのロシア国立図書館で資料を収集した。また、ブレジネフ期のソ連の人々が、日本に関係する風刺的言説や風刺画とどう向き合っていたかという点について、文化人類学的観点から分析した。この研究成果については、2018年2月14日にロシア国立人文大学の国際学会「日本の歴史と文化」でロシア語で報告を行い、学会報告論集に投稿した(刊行は2018年10月頃の予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成29年度に、大祖国戦争(独ソ戦)期のヴィジュアル・カルチャーと児童文学テクストとの関係性について研究を行う予定だったが、昨年度から同時並行で行っていた、ラジオ受容に関する論文の執筆を優先したため、十分に考察できなかった。当時の風刺画やアニメーション等の視覚メディアに関する資料はある程度収集できているので、平成30年度に成果を発表できるように努力したい。 また、冷戦時代のメディア研究については、一定の成果を出すことができたが、視覚メディアと文学テクストとの関係性については、論点の整理に時間がかかり、当初の計画通りに論文を発表することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、当初の研究計画にあった大祖国戦争期のメディア文化と文学テクストの関係性について、特に児童文学のテクストに絞って分析を行う。 また、冷戦期のソ連における日本表象について、今後は聴覚メディアにも分析範囲を広げ、最終的には日本文学の翻訳テクスト受容との関係性について考察する。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) 平成29年4月頃の予定では、ブルガーコフに関する国際学会が、アルメニアのエレヴァンで平成29年9月に開催されることになっていた。当初は、研究費の一部をその旅費と学会参加費に充てるつもりだったが、開催予定日の直前に10月に変更となり、勤務先の大学の授業と重なったため、やむを得ず参加を取りやめた。また、冷戦時代の視覚メディアに関する資料収集と分析に時間がかかり、その他のメディア(特に聴覚メディア)と文学テクストとの関係性について詳細に調査できなかった。 (使用計画) 平成30年度より、研究代表者の所属機関が広島県呉市の海上保安大学校に変わることから、東京大学等の関東圏の大学図書館での資料収集のために、国内旅費に充てたい。また、大祖国戦争期及び冷戦期のメディア文化に関する図書を購入したいと考えている。
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Research Products
(6 results)