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2016 Fiscal Year Research-status Report

言語と文体の階層制に関する研究―イタリアの「言語問題」を中心として

Research Project

Project/Area Number 15K02409
Research InstitutionHitotsubashi University

Principal Investigator

糟谷 啓介  一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (10192535)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords言語問題 / イタリア語 / 俗語論
Outline of Annual Research Achievements

平成27年度には16世紀の「言語問題」を取り上げたのに続いて、平成28年度には18世紀から19世紀前半までの『俗語論』解釈の変遷を通して、「言語問題」の枠組みの変容を考察した。研究実績としては、2017年3月に刊行された言語社会研究科紀要『言語社会』11号に発表した論文「イタリアの「言語問題」における言語と文体の概念(Ⅱ)――ダンテ『俗語論』はどのように読まれたか」が挙げられる。この論文では、Cesarotti、Monti、Perticariなどの「イタリア主義者」の議論のなかで、イタリア共通の文化的書記言語の必要性が論じられるときには、必ずダンテの「高貴な俗語」の理念が引き合いに出されたことの意味を追究した。そして、その背景には、「言語問題」の焦点が文学的書きことばにおける規範だけではなく、社会の要請に応える文化言語や科学言語など、それまで取り上げられなかった言語領域に拡大したことを明らかにした。
資料調査の実績としては、2017年3月に行なったフィレンツェへの出張を挙げることができる。この出張ではクルスカ・アカデミー図書室における資料調査を行った。クルスカ・アカデミーは1583年にフィレンツェで創設された言語アカデミー団体であり、それ以降短い中断をはさんで今日に至っている。図書室では19世紀に展開されたマンゾーニ主義をめぐる論争の資料を調査し、その過程で、当時の雑誌の抜き刷りなどをクルスカ・アカデミーが独自にまとめた資料集に出会うことができるなど、日本ではおよそ見ることのできない多くの重要な資料を閲覧・複写することができた。平成29年度の研究は、19世紀のマンゾーニ主義についての考察が中心となるため、この出張は次年度の研究の準備という点でも、たいへん充実した成果を挙げることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成27年度には16世紀の「言語問題」を、平成28年度には18世紀後半から19世紀の「言語問題」を扱うというように、年度ごとに順調に研究が進行している。このように、統一的なテーマのもとで、時代順に問題の展開を跡づけるという方法論は、「言語問題」のように歴史的に長期に渡って続けられた論争を解釈するにはふさわしいやり方であるといえる。また、それぞれの年度における主な研究成果は、当該年度末に刊行される研究科紀要に論文として発表しており、成果の発表という点でも順調に進行している。
これまで二年間の研究成果をまとめるなら、「言語問題」の枠組みには純粋主義、イタリア主義、フィレンツェ主義の三つの潮流があること、そしてダンテの『俗語論』、とりわけそこで提唱された「高貴な俗語」の理念は、それぞれ潮流に応じて異なる解釈を受けたことを明らかにした。つまり、ダンテのいう「高貴な俗語」は「言語」のレベルで成立するのか「文体」のレベルで成立するのかという議論は、すぐさまイタリアにおける規範言語のあり方をめぐる立場決定に直結する性質のものであった。この点を具体的な文脈に即して鮮明にしたことが研究の大きな成果であり、現在までの研究の進捗が順調であることを示すものである。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究においても、文献に基づく研究調査を行うという点では変わりがない。平成29年度には、19世紀のマンゾーニ主義をめぐる議論を採り上げる予定である。とくに、小説家マンゾーニが文部大臣ブロリオに請われてイタリアの言語統一の方策を提示する委員会の長に任命され、1868年には口語フィレンツェ語に基づくイタリアの言語統一のプランを提示するに至る過程に注目する。マンゾーニの提案はイタリア全土に大きな反響をもたらしたが、そのなかでまたもやダンテの『俗語論』解釈が行われたことに注目する。こうした考察にあたっては、平成29年3月のフィレンツェ出張で入手した多くの資料が役に立つ。たとえば、1868年のマンゾーニの報告をめぐる地方からの様々な反応や、マンゾーニ主義の立場に基づいて編纂された『イタリア語新辞書』についての議論などが、考察の対象となる。また、マンゾーニと言語学者アスコリとの対立については、これまでの研究で議論が尽くされていたように見えたが、新たな問題系を設定することによって、別な側面が見えてくることが予想できる。今後の研究においては、とりわけリソルジメントという国家統一期における「言語問題」の政治的・社会的・文化的位置付けという問題に留意する。使用する書籍や資料などの研究の準備は整っており、研究の方向性もおおかた確定しているので、順調に研究を推進することができると思われる。

  • Research Products

    (1 results)

All 2017

All Journal Article (1 results) (of which Acknowledgement Compliant: 1 results)

  • [Journal Article] イタリアの「言語問題」における言語と文体の概念(Ⅱ)――ダンテ『俗語論』はどのように読まれたか2017

    • Author(s)
      糟谷啓介
    • Journal Title

      言語社会(一橋大学大学院言語社会研究科紀要)

      Volume: 11 Pages: 260-282

    • Acknowledgement Compliant

URL: 

Published: 2018-01-16  

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