2015 Fiscal Year Research-status Report
1980年代ソ連のグローカル・アヴァンギャルド――地方都市の前衛芸術に関する研究
Project/Area Number |
15K02410
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 正美 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (10326621)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ロシア / 前衛音楽 / 外国文学 / 比較文学 / 現代詩 / 芸術史 / 芸術諸学 / 非公式芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者である鈴木正美を研究の統括者として、①非公式芸術の誕生と発達」研究グループ(鈴木正美、リュドミーラ・ドミートリエヴァ、他)、②「ジャズ・ロック文化の進化と変容」研究グループ(岡島豊樹、キリル・モシュコウ、ロマン・ストリャール、アレクサンドル・ベリャーエフ他)、③「人形劇の変化と人形美術の誕生」研究グループ(大井弘子、他)の3グループが各々研究にあたり、次の2回の研究会および講演会を行った。第1回研究会「ポスト・クリョーヒン・スタディーズ」(2015年5月9日、サウンド・イメージ研究所で開催。報告者:鈴木正美、岡島豊樹、土肥理香)、第2回研究会「キリル・モシュコウ講演」(2016年1月9日、サウンド・イメージ研究所で開催。報告者:キリル・モシュコウ、鈴木正美、岡島豊樹)、および2016年1月8日、新潟大学におけるキリル・モシュコウ講演「ロシアにおけるジャズ。歴史の転機における文化の衝突」と特別授業「ロシアにおけるジャズの〈声〉」である。 鈴木正美は3月18日~29日、ロシアでの現地調査を行った。3月19日~24日はノヴォシビリスクにおいて研究協力者のロマン・ストリャールのコーディネートで、1970年代からノヴォシビリスクで前衛音楽・芸術を支えてきたセルゲイ・ベリチェンコに聞き取り調査を行い、多くの資料を提供された。また、ノヴォシビリスク音楽院、ノヴォシビリスク国立大学、ノヴォシビリスク現代美術館で諸関係者と面会し、有益な情報を得たばかりでなく、重要な資料を入手した。3月24日~28日には文化センター「ドム」、トレチャコフ美術館新館等で研究協力者のセルゲイ・レートフやアレクサンドル・ベリャーエフ等の協力のもと、諸関係者と面会し、多くの資料を入手することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ソビエト・ジャズの黄金期と呼ばれる1980年代ソ連の地方都市における前衛芸術・非公式芸術・アンダーグラウンド文化がどのように生まれ、変化していったのか、そしてローカルな芸術・文化が如何に世界的に評価されるグローバルな芸術・文化となっていったのかを明らかにすることにある。そこで、本年度は2015年3月に行った海外調査の研究報告会を開催し、さらにロシアにおける唯一のジャズ専門誌「Jazz.ru」の編集長であり、ロシアのジャズ史に造詣の深い研究協力者のキリル・モシュコウを日本に招へいし、研究会、講演会を開催した。これにより旧ソ連圏の地方都市におけるジャズ・ロック文化の進化と変容について多くの知見を得ることができた。 鈴木正美は3月18日~29日にロシアで現地調査を行ったが、これにより研究協力者のロマン・ストリャールや1970年代からのノヴォシビリスクの前衛音楽・芸術に詳しいセルゲイ・ベリチェンコに聞き取り調査を行うことができたばかりか、日本では入手不可能な貴重な資料を提供されたことは大きな収穫であった。モスクワではトレチャコフ美術館新館で個展を開催中だったイリーナ・ザトゥロフスカヤに会い、聞き取り調査を行った。やはり彼女からも重要な資料を入手した。 当該研究に関わる資料(書籍、論文、音源、画像、映像)は順調に収集しており、上記のストリャ-ル、ベリチェンコのように研究に協力してくれるロシア人がさらに増えたことで、今後の資料収集・調査がますます容易になることが期待できる。 さらに、ウラジーミル・タラーソフの自伝『トリオ』の翻訳本をを2016年1月に出版した。これにより現代ロシアの非公式芸術、前衛音楽、アンダーグラウンド文化の一端が明らかになったことは間違いない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の核となる①非公式芸術の誕生と発達」研究グループ(鈴木正美、リュドミーラ・ドミートリエヴァ、他)、②「ジャズ・ロック文化の進化と変容」研究グループ(岡島豊樹、セルゲイ・レートフ、キリル・モシュコウ、ロマン・ストリャール、アレクサンドル・ベリャーエフ、他)、③「人形劇の変化と人形美術の誕生」研究グループ(大井弘子、ナターリヤ・コストローヴァ、他)、という3つのテーマごとに研究グループをつくり、それぞれの領域で研究を行う。 平成28年度では、4-6月にコストローヴァの協力のもと大井弘子がモスクワの国立アカデミー中央人形劇場と劇人形博物館、およびサンクト・ペテルブルクで現地調査を行う。鈴木正美は9月にヤクーツク、3月にヤロスラーブリとサンクト・ペテルブルクで現地調査を行う。 8月までには各研究グループによる討議を行い、10月には本研究プロジェクト参加者による研究報告会を開催し、各人の相互理解を深める。さらに現地調査での具体的な調査内容を再検討する。海外研究協力者とは電子メールによって討議を重ね、現地調査に関しても意見交換をし、調査におけるさまざまなコーディネートを依頼する。各グループは必要に応じて個別の研究会を開き、研究をさらに進めていく。以上の研究をもとに、平成29年2月にはセルゲイ・レートフを招へいして、本研究プロジェクト参加者による研究会を開催し、本年度の研究成果を確認し、問題点や課題を洗い出す。これをもとに平成29年度以降の計画の調整、具体化などについて討議を重ねる。研究成果は鈴木正美のホームページにて公開する。
|
Causes of Carryover |
平成28年3月が決算月にあたり、予算を2月末までに使用しなければならず、3月の使用予定が立たなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に計画している研究調査のための旅費に補填する。
|
-
-
-
[Book] トリオ2016
Author(s)
ウラジーミル・タラーソフ著、鈴木正美訳
Total Pages
324
Publisher
法政大学出版局
-