2016 Fiscal Year Research-status Report
ハンス・ドリーシュ「新生気論」の研究―「エンテレヒー」の行方
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15K02416
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福元 圭太 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (30218953)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機的・非有機的 / 超心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は日本独文学会の機関誌に査読付きの欧文論文を投稿し、「Das Organische und das Unorganische bei Doktor Faustus ― Das III. Kapitel als Paradigma des gesamten Romans ― 」,In: Neue Beitraege zur Germanistik (日本独文学会), Band 15, Heft 1, 153, 112-129 (2016年12月)として掲載された。 上記論文はトーマス・マンの後期長編小説を対象としたものであるが、ドリーシュの言う「有機体の哲学」という観点に示唆を得て、マン文学全体を貫く有機体と非有機体の消息をトレースしたもので、ドイツ人の査読者(ドイツ本国におけるマン研究の権威)からも一定の評価を得ることができた。 申請者は、この雑誌のこの号(トーマス・マン特集号)には編集者としても参画し、他の投稿者の欧文論文も3本、複数回にわたって査読したので、かなりの時間と労力を費やすることになり、ドリーシュそのものについては、その超心理学的な著作を分析し、資料もほぼ閲したが、論文にまとめるところまではいっていない。 なお昨年度末締切で、今秋に出版予定のドイツ哲学に関する概説書(ミネルヴァ書房刊)に、出版社からの依頼で、申請者は「グスタフ・テオドール・フェヒナー」の項目を執筆した。フェヒナーは、ドリーシュに目を向ける契機を申請者に与えた自然科学者・自然哲学者である。概説書とはいえ、マイナーなフェヒナーの場合は事典の一項目という扱いなので、記述の分量は少ない。同概説書は、他の執筆者の筆が遅れなければ、29年度中に活字になるはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、申請者は日本独文学会の機関誌に欧文論文を投稿し、さらに同号の編集委員として欧文論文3本の複数回にわたる査読に携わったため、ドリーシュについては、後期の超心理学に関する著作の分析までしか到達しておらず、それに関する論文がまだ準備段階であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ準備のできたドリーシュの超心理学に関する著作について、論文をまとめ、発表する予定である。なお、当初の予定にあったエルンスト・ユンガーとグスタフ・マイリンクにおよぼしたドリーシュの影響のうち、後者については直接的な影響は薄いことが、申請者の予備的な研究の過程で判明しつつある。もっともマイリンクはミュンヘンでの超心理学的サークルでドリーシュとコンタクトがあったので、その点でドリーシュと関連付ける予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題は29年年度が3年目になる。1年目(平成27年度)から2年目(平成28年度)に移る際に138000円の繰り越しが生じたが、これは27年度報告で記したように、ドイツでの資料収集がもはや書物の購入やコピーではなく、スキャンによる読み取り(しかもミュンヘン大学図書館の場合無料)という方式に「進化」していたためである。すなわち初年度で資料収集のための予算がほぼそのまま(145000円)浮き、2年目はその余剰をそのまま温存したということになる。 別方向から言えば、28年度分の予算は、予定通り消化したので、初年度の余りをそのまま3年目に持ち越すことになった、というのが現在の状況である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料整備、特に書籍の購入のためにはこの15万弱の繰り越しは非常に有用である。特に超心理学、生物学、エルンスト・ユンガー関係の資料についてはこれから補充したいものがあるので、主として資料整備に充てる計画である。
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