2015 Fiscal Year Research-status Report
19世紀のドイツにおける女権運動と自然科学研究の発展,およびそれらの連関について
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15K02419
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
竹内 拓史 麗澤大学, 外国語学部, 准教授 (00431479)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゲオルク・ビューヒナー / エルンスト・ビューヒナー / 精神鑑定書 / 宿命論 / アンガジュマン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は自然科学研究の発展と女権運動の発展が,19世紀のドイツ及びヨーロッパでどのような関わりを持つのかをドイツの作家ゲオルク・ビューヒナーとその周辺の人物を中心に考察し明らかにすることである。平成27年度はビューヒナーの父エルンストの医学研究の特徴とそのビューヒナーへの影響について考察し,成果は以下の二点である。 1.「第17回日本ゲオルク・ビューヒナー協会研究発表会」で,「エルンスト・ビューヒナーの鑑定書,およびそれらのゲオルク・ビューヒナーへの影響について」という題目で発表した。 2.「国際シンポジウム ~詩作における異文化との接触~ Dichterische Beruehrung mit anderen Kulturen」で,「革命・鑑定・解剖―ゲオルク・ビューヒナーは父から何を学んだか―」という題目で発表した。 上記二点の発表では,エルンストの医学研究と精神鑑定書の特徴,及びビューヒナーがそれらから受けた影響を考察し,ビューヒナーが父から受け継いだ「物事を徹底的に科学的に検証する姿勢」が,彼の文学作品のみならず宿命論思想にも影響を与え,さらに彼のアンガジュマンにも通ずる可能性を明らかにした。これまでビューヒナーの宿命論思想と革命運動への参加は矛盾するものと考えられてきたが,これにより父から受けついだ「物事を徹底的に科学的に検証する姿勢」がそれら二つをつなぎ,それらの矛盾を解く鍵であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では初年度にビューヒナーの妹ルイーゼの女権運動について調べるためドイツに調査に行く予定だったが,学部執行部としての業務が予想以上の負担だったため,渡独するためのまとまった時間をとることができなかった。 だが「研究実施計画」の第二案として書いたように,ルイーゼについて資料調査をする時間が無い場合は,まず父親エルンストの医学研究や精神鑑定書がビューヒナーに与えた影響について研究を進める予定であった。その意味では一年目にそのテーマについて,「第17回日本ゲオルク・ビューヒナー協会研究発表会(於武蔵大学)」と「国際シンポジウム ~詩作における異文化との接触~ Dichterische Beruehrung mit anderen Kulturen(於岩手大学)」で二回の発表をし,そこで多くの有益な見解を他の参加者から得て,それを踏まえた上で自分の見解を深めることができた意義は大きいと言える。 このテーマについては今年度中に論文集に発表予定ではあるが,初年度中には論文として発表できなかったため,進捗状況としては「やや遅れている」とみなすのが妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは一年目に学会や国際シンポジウムで発表し,すでに自分の見解をまとめてある「エルンストの医学研究と精神鑑定書の特徴と,それらが息子ビューヒナーに与えた影響」について論文を発表する予定である。 それと平行して,ビューヒナーの妹ルイーゼの女権運動や,父エルンストと弟ヴィルヘルム,ルートヴィヒ,アレクサンダーの自然科学研究および自由主義思想についての資料調査を現地ドイツでし,ビューヒナーと彼らのお互いへの影響を二年目にまとめる予定である。 最終的にはビューヒナーの甥で化学者だったエルンストやその息子カールも含めビューヒナー家四代~五代にわたる自然科学研究と権利運動,さらには文学との関連を明らかにすることを目指している。
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Causes of Carryover |
学部執行部としての仕事が忙しくまとまった時間をとることができず,初年度に予定していたドイツでの資料調査を行うことができなかったため,旅費として計上していた助成金を使用することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度にできなかったドイツでの資料調査を二年目に行う予定なので,そのための旅費や資料収集,学会発表時の旅費などに使用する予定である。
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