2018 Fiscal Year Annual Research Report
The development of women's rights movement and natural sciences in Germany in the 19th century
Project/Area Number |
15K02419
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
竹内 拓史 明治大学, 経営学部, 専任准教授 (00431479)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲオルク・ビューヒナー / ルイーゼ・ビューヒナー / エルンスト・ビューヒナー / 女権運動 / 自然科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,ドイツにおける女権運動と自然科学の発展の連関をビューヒナー家各人の権利運動や自然観を比較することで明らかにすることだった。 前年度までにエルンストの自然観や政治観が,息子ゲオルクの自然観や革命観に与えた影響を考察し(「ビューヒナーが父から受け継いだもの受け継がなかったもの―エルンスト・ビューヒナーの鑑定書の考察―」(国内学会誌に投稿済み,掲載未決定)),本年度は,ゲオルクの妹ルイーゼの女権運動の特徴を,父エルンストの自然観・政治観や兄ゲオルクら兄弟の革命観・自然観と比較検討し(「革命・自然科学・処世術,父から兄妹へ引き継がれたもの ―ビューヒナー兄妹の革命運動と女権運動―」(『異文化接触研究の諸相』(川村和宏編,朝日出版,2019年12月刊行予定)所収,掲載決定)),以下のことを明らかにした。 ルイーゼは兄弟達と異なり文学や語学の知識を独学で身につけつつ,父エルンストの自由主義的思想も兄弟同様色濃く受け継いだ。彼女は自然科学の専門教育も受けていないが,高い知力と知的好奇心で社会を分析的・批判的に見る目を養い,兄弟と同じく社会変革を目指した。彼女が父や兄に影響を受けたことは明らかで,彼女の女権運動の思想にはゲオルク同様社会を極めて現実的かつ分析的に見る自然科学的視点が看取される。更に彼女はどの兄弟よりも父エルンスト流の長けた処世術を身につけ,一見すると女権運動と対立する男性の支持も,権利運動と対立する大公妃の支持も得て活動を広めた。ゲオルクら兄弟は様々な分野で高く評価されてきたが,こと権利運動に関してはルイーゼこそが自然科学と自由主義思想を権利運動の場で融合させ,現実的・戦略的な形でその運動を成し遂げ推進したビューヒナー家唯一の人物だったと言える。彼女の成功は19世紀のドイツでは希有なことで,今後ドイツの女権運動を論じる際は彼女の影響は無視できないであろう。
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