2016 Fiscal Year Research-status Report
スイスの疾風怒濤と美学的共和主義に関する総合的研究
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15K02423
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
今村 武 東京理科大学, 理工学部教養, 教授 (60385531)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スイス文学 / シュトゥルム・ウント・ドラング / 啓蒙 / 美学的共和主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究実績の概要は以下の研究対象及び、研究活動分野において説明する。 (1)平成28年度の研究対象は、大項目の「チューリヒ滞在のドイツ詩人」においては、特にクロプストックに焦点を当てて遂行された。その成果は学会発表を通じて当該年度に公表した。「スイスのシュトゥルム・ウント・ドラング」の当該年度重点項目は「不正なラントフォークト」であるが、これについては主に文学社会学的、スイスの共和主義的改革運動との関連からその背後関係の調査を進めた。大項目の三つ目である「美学的共和主義」については特に「自然」概念の由来をルソーとの関連から調査した。この点においては、ドイツ側の研究協力者であるトメク教授から有益な示唆を受けた。 (2)国外の研究者との連携の深化。特にレーゲンスブルク大学のシュトゥルム・ウント・ドラング研究者であるトメク教授との連携を深め、今後の研究計画、またその成果の発表方法等についてさらに詳細に理解することができた。 (3)ドイツにおける資料調査と関連情報の収集。9月のドイツ語圏滞在を通じての資料収集と分析によって、当該年度の実施計画にある研究対象に関するより多くの資料について知見を深めることができた。新たな知見と問題領域の設定は、本研究成果の結実となる研究書籍の詳細目次に反映している。 (4)継続的なPDCFAサイクルの遂行。関連分野の研究者によるフィードバックを通じて、本研究計画の実施状況を客観的に分析し、来年度以降における研究遂行に関してのモティベーションと具体的な重点実施項目を抽出することができた。 (5)研究成果を継続的に論文、及び学会発表の形で公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は三つの領域から形成されているので、各々の分野における進捗状況について自己点検の結果を記載する。 (1)啓蒙のネットワーク:「概ね順調に進展している」スイスのボードマーとブライティンガーから広がる全ヨーロッパを網羅するほどの啓蒙のネットワークは、その規模の大きさから全体像を把握することは容易ではない。しかしながら本研究においては、重要な軸となる線を辿りつつ調査を進めることで、比較的理解の容易な形でその展開形を提示しつつある。時系列と地域的な移動を掛け合わせることが重要であると認識している。 (2)スイスのシュトゥルム・ウント・ドラング:「当初の計画以上に進展している」ドイツ語圏スイスにおける疾風怒濤の文学に関しては、平成28年度までに対象としている分野に関しては研究の蓄積が進んでいる。これらを基にした新しい知見を、論考あるいは学会発表の形にするための時間の確保が課題と言える。 (3)美学的共和主義:「概ね順調に進展している」とりわけ美学的展開に関する諸資料は、その分析に時間を費やすことから、計画以上に進展しているとは評価し難い。しかしながら、シュトゥルム・ウント・ドラングにおいて問題となっている概念を辿りつつ分析を進めることで、順調な進展をしていると評価できる。来年度以降の学会発表を目指すことで弾みをつける必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究の推進方策については、全体と三つの問題領域に関して記しておく。 (1)研究計画全体について。研究計画どおり、本研究計画の土台を形成する1740年代から60年代にかけてのスイスの疾風怒濤文学の展開を俯瞰する目処がついてきたところである。それゆえ、今後の研究計画は、当初の通り遂行できるものと判断できる。 (2)三つの研究領域については、特に「美学的共和主義」に含まれる諸概念の変遷を実際の作品群に照らして調査することに重点を置く必要性を感じている。この分野については、学会発表及び論考執筆を重点的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
ドイツ語による論文執筆に際して、ネイティブチェックの費用を計画していたが、レーゲンスブルク大学のスタッフ等の好意により無償でチェックを受けることができたため、及び物品の支出としてパソコン等の購入を計画していたが、機器がまだ使用可能なため購入を延期したため、またドイツ語圏研究滞在に際しては、最も効率的な費用の支出を心がけ(格安航空券など)たため、次年度の使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果を国際的に発信するためのシンポジウム開催を計画しており、ドイツ側の研究協力者との弾力的な打ち合わせ、及びさらなる研究の進展のため、次年度以降は複数回のドイツ語圏研究滞在を実施する。これには相当の費用も必要となるので、次年度使用額をそのために支出する予定である。
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Research Products
(5 results)