2017 Fiscal Year Research-status Report
スイスの疾風怒濤と美学的共和主義に関する総合的研究
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15K02423
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
今村 武 東京理科大学, 理工学部教養, 教授 (60385531)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スイス文学 / シュトゥルム・ウント・ドラング / 18世紀ドイツ文学 / 啓蒙 / 美学的共和主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究実績を、本研究の「研究目的」および「実施計画」に照らし合わせ、以下5つの研究対象および研究活動分野において説明する。 (1)平成29年度から本研究は「第2段階」となる。これは予定通りの進捗状況と評価できる。本研究の当該年度(平成29年度)に振り分けられた三つの研究対象についての実績を具体的に記述する。第1の研究対象「ゲーテのスイス旅行」については、ゲーテの小説『若きヴェルテルの悩み』との関連から研究を進め、その成果は来年度に学会発表の予定である。第2の分野「ヴィーラントのシェイクスピア翻訳」に関しては、ドイツ語圏スイスにおけるシェイクスピア受容を背景とするシェイクスピア移入事情を調査し、現在はその成果の発表を準備している。そして「文明批判とシュトゥルム・ウント・ドラング」に関しては、ルソーと疾風怒濤の詩人の美学的発展の関連から調査研究を遂行し、この成果もまた関連する学会において発表を準備中である。(2)海外の研究者との連携に関しては、特にドイツ・レーゲンスブルク大学哲学学部のトメク教授との連携研究を継続し、シンポジウムの企画を進めた。(3)ドイツ語圏における最新の資料収集、古文献の分析、研究遂行に関する打ち合わせを8月の研究滞在を通じて精力的に進め、新たな知見を獲得するとともに、新たな作業仮説を立てた。(4)本研究は継続的にPDCFAサイクルを遂行すること、および関連書分野の研究者からの助言により、遂行状況を客観的に分析、来年度以降の研究遂行に関する具体的な重点実施項目を抽出した。(5)本研究の成果を平成29年度も引き続いて「論文」「学会発表」「研究会発表」の形で公表した。これは特に前年度の研究成果をまとめたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は三つの領域から構成されているので、各々の分野における進捗状況によりその点検結果を報告する。 (1)「啓蒙のネットワーク」については「当初の計画以上に進捗している」と評価できる。18世紀スイスの二人の文人・学者・歴史家であるボードマーとブライティンガーを中心とする啓蒙のネットワークの広がりは、彼らの次の世代を介して全ヨーロッパ規模の広がりを持っている。本研究では、とりわけヴィーラントの役割に焦点を当てることでその容易な理解を助ける視点を提供した(平成29年度の実績として)。 (2)「スイスのシュトゥルム・ウント・ドラング」の分野は「おおむね順調に進捗している」と判断しうる。平成29年度の個別テーマである「ヴィーラント訳のシェイクスピア選集」に関しては、特にこれまでのドイツ文学研究においては未開の地であったと言っても良いヴィーラントのスイス滞在時代における英文学、シェイクスピアとの出会いの背景と翻訳に至るまでの経緯を明らかにすることができた。この研究成果については現在論考の形でまとまりつつある。 (3)「美学的共和主義」については「おおむね順調に進捗している」と判断しうる。シュトゥルム・ウント・ドラングの美学的発展とスイスから始まる美学的共和主義との関連性に関しては、特にルソー受容を軸に研究を進めることで一定の成果を上げることができた。この点に関してもその成果を学会発表原稿の形でまとめている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究の推進方策に関しては、全体の推進方策とそれに対応した三つの問題領域に分けて記載する。 (1)研究計画全体については、これまでのところ当初の研究計画に沿って遂行することが出来ている。とりわけ分析すべき文献が多岐にわたるスイスから始まる美学的な展開に関しても平成29年度は予想以上の進展を見ることが出来た。以上の状況から、本研究は当初の計画通り、あるいは計画以上に遂行できるものと判断し、来年度の研究を継続する。 (2)三つの研究領域に関しては、「ヴィーラント」「ゲーテ」「レンツ」の三人の詩人に関する個別的なスイス文学との関連性を研究し、統合する必要が出てきた。これら三人の詩人に共通する「美学的共和主義」を抽出し、提示することが以降の研究におけるメインテーマとなる。この研究に関しては相当に注力する必要性がある。
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Causes of Carryover |
理由:ドイツ語で執筆した論文のネイティブチェックに関しては別途費用を計上していたが、レーゲンスブルク大学のスタッフの行為により、無償でチェックを受けることが出来た。また、物品の支出としてパソコン等の購入を計画していたが、機器がまだ使用可能なため購入を延期した。またドイツ研究滞在に際しては、最も効率的な支出を心がけたため、次年度の使用額が生じた。 使用計画;研究成果を国際的に発信するため、このテーマについての国際的ないシンポジウム開催を計画している。ドイツ側の協力者であるトメク教授との打ち合わせ、および更なる研究の進展のため、複数回のドイツ語圏滞在を計画している。特にドイツ語圏スイスの滞在には相当の費用が生じる恐れがあるため、次年度使用額をそのために支出する予定である。
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Research Products
(3 results)