2016 Fiscal Year Research-status Report
イシス神を巡る表象についての理論的、図像学的、比較文化的研究
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15K02424
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
坂本 貴志 立教大学, 文学部, 教授 (10314783)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地母神 / 豊穣神 / 弁財天 / 世界の複数性 / ゲーテ / ヘルダー / 古代神学 / 永遠の哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
α理論的側面での課題:イシス神のイメージを成立させる背景にあるところの、18世紀ドイツにおける汎神論に関して、「神即自然」の理論では本来否定されるはずの超越神が、なお「神即自然」の理論と調和する可能性を考究する。-ヘン・カイ・パンの思想に関しては、古代神学と永遠の哲学の側面から検討を加えて、理論的側面に関しての結論の見通しがほぼついた。 β図像学的側面での課題:イシスは近代においては「エフェソスのディアーナ像」という特殊なイメージにおいて理解される。この図像が、ルネサンス期のヨーロッパ以降の時代に集合的な記憶として共有されていたことを明らかにし、ドイツ18世紀および19世紀初頭の様々な文化と思想の中で用いられる具体的な様相を実証的に研究する。-エフェソスのディアーナ像の根源を、理論的にはバハオーフェンに依拠しつつ探究し、地中海地母神の様々な具体的様相を検討した。 γ比較文化的側面での課題:アタナシウス・キルヒャーはイシス神の持つ包括的かつ統合的な性格を、異文化理解の場面で応用的に使用した。「シナのイシス」という認識によって、キルヒャーは、東洋世界をもまた古代神学的な根源としてのエジプトに接続するのだが、それは、一なる神の、宇宙における様々な惑星上における多様な現れを、地球上の異なる文化圏における多様なる現れとしてミニマムに理解しようとする態度の現れではなかったか。このテーゼの正否を検証する。-この観点では、地中海地母神と日本の弁財天の比較検討を行った。αの理論的側面との関連では、具象的姿を持つ地母神ないしは豊穣神が、複数世界論を背景とする時代においては神性を担保するための一つの解であり、これを『ファウスト』に主として結実するゲーテの思想に即して検討した。 αβγの形で掲げていた研究目的は、28年度実施計画の枠内で予定していた研究材料に即して探究された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に挙げた研究内容は、国内外の学会にて発表した(日本シェリング協会、日本ヘルダー学会、アジア・ゲルマニスト会議、立教大学国際シンポジウム)。また、岩波書店の『思想』を通して、本研究の理論的背景に関する考察を幅広い読者層に向けて発信した。またイシス神の図像表現の成立原因をより根源的な層において検討するためのフィールドワークをマルタ島、クレタ島において行い、イシス神をより包括的に考察するための実証的な足掛かりを今年度の研究を通して得ることができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
理論面では、古代神学の理解に目処がたち、また図像面に関する理解に関しては、弁財天への拡がりを確保することができた。この両面を、イシス研究から既に得ることができたので、この研究内容を書物にて公表する準備を行う。合わせて、国内外の研究者の協力を得て研究内容を検証する。さらに、国内外の学会にて、研究内容を公表する。以上に関しては、日本18世紀学会共通論題の設定と発表、ボン大学での講演、テュービンゲン大学研究者との共同研究を通して行う予定である。
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Causes of Carryover |
訪問を予定していた資料館に、本務校の勤務の都合で訪問できず、このため旅費の消化額が予定を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた資料館を最終年度に訪問し、旅費に上乗せして消化する予定である。
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Research Products
(8 results)