2016 Fiscal Year Research-status Report
戦間期フィンランドにおける「大フィンランド」表象とその利用
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15K02428
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Research Institution | Tokiwa Junior College |
Principal Investigator |
石野 裕子 常磐短期大学, キャリア教養学科, 准教授 (70418903)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フィンランド / 北欧文学 / 表象文化 / 戦間期 / ナショナリズム / イレデンティズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は戦間期フィンランドにおける「大フィンランド」の表象について、平成27年度の海外調査(ヘルシンキ)で収集した資料、特にカレリア学徒会の一次資料及び市販された歴史文学書を中心に分析を行った。戦間期を代表する右翼団体であるカレリア学徒会が「大フィンランド」をテーマとする詩集を出版し、文化的なプロパガンダを行っていた点を明らかにすることができた。また、1929 年に発表されたアールノ・カリモの『小丘の夜』 を入手し、分析を行った。同書は子どもむけの歴史書であるが、「大フィンランド」のプロパガンダを担っている描写があるので、その描写とカレリア学徒会の「大フィンランド」像の相違点を分析した。 平成28年4月30日には、世界最大の北欧研究の学会であるSociety of the Advancement for Scandinavian Study(SASS)の年次大会でThe Acceptance of the Kalevala in Japan: From historical and political perspectiveを発表した。本発表では、「大フィンランド」と結びつけられていたフィンランドの叙事詩カレワラが、日本でどのように受容されたのかを歴史的、政治的観点から考察し、本科研で扱っている研究対象期に、本国フィンランドと全く異なる受容のされ方を異国でなされた点を明らかにした。特に、戦間期においてフィンランド本国では膨張主義思想の根拠として使用されたカレワラが、日本では平和の象徴として受容された点、叙事詩という形だけではなく児童文学として「教養文学」の形で広く普及していった点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
夏季に予定した海外調査を実施することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は平成28年度にSociety of the Advancement for Scandinavian Study(SASS)の年次大会で発表した内容を英語論文に仕上げ、学会誌に投稿する。また、平成28年度に実施できなかった海外調査を実施し、カレリア学徒会以外の団体で「大フィンランド」を文化的に表現したものがないかどうかを調査する予定である。 また、フィンランド史の概説書及び北欧文化に関する事典の出版を予定している。双方とも「大フィンランド」について取り上げる予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた海外調査を諸事情で取りやめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金は夏季に予定する海外調査にあてる。また、平成28年度に行った国際学会での発表原稿を英語論文にする際の校正費用にあてる予定である。
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