2018 Fiscal Year Annual Research Report
The representations of 'Greater Finland' and its use during Interwar Period in Finland
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15K02428
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
石野 裕子 国士舘大学, 文学部, 准教授 (70418903)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フィンランド / ナショナリズム / 文化表象 / 西洋史 / 北欧 / 文化受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に当たる平成30年度は本科研のテーマである戦間期フィンランドにおける「大フィンランド」表象とその利用について形づけるために、前年度に収集したカレリア学徒会の出版物の分析を行った。分析を行っていくうちに、一般大衆が「大フィンランド」をどのように捉え、受容して行ったのかという問題に突き当たったため関連資料を調べに、夏期にヘルシンキのフィンランドの国立図書館を中心に資料を収集、分析を行った。特に全国的な写真週刊誌であるSuomen Kuvalehtiに「大フィンランド」の表象が多いことに気づき、同誌を中心に「大フィンランド」がどのように写真や記事で表象されて行ったのかに焦点を当てて分析を行った。その結果、「大フィンランド」という言葉自体はほとんど使用されることがなかったが、「大フィンランド」を示唆する写真や記事はしばしば掲載されていた、さらには恣意的にフィンランドとのつながりを強調する写真が多く掲載されていたことが明らかになった。同誌の記事の論調は、「大フィンランド」を目標に掲げた右翼団体であるカレリア学徒会が発行している出版物よりも穏やかであるが、かえって世論を「大フィンランド」賛同に向けさせる大きな影響力を有していたことが明らかになった。 この資料調査で得られた研究結果を、『国士舘大学人文学』(通巻51号)に論文「フィンランドにおける『大フィンランド』の文化的表象-大衆誌『スオメン・クヴァレヒティ』(1918-1944)の分析を通して-」で発表した。 また、バルト=スカンディナヴィア研究会12月例会にて「戦間期フィンランドにおける『大フィンランド』の文化的表象」という題名で発表を行った。さらに「大フィンランド」と関連付けられて表象される『カレワラ』受容についての英語論文を執筆した。その成果を今年度中に出すことはできなかったが、令和元年中に論文を投稿し、発表予定である。
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