2015 Fiscal Year Research-status Report
異文の発生・定着に見る読み手の欲望と書き手の文体の傾向性との考量についての研究
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15K02430
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐竹 保子 東北大学, 文学研究科, 教授 (20170714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 智寛 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10400201)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 中国文学 / 中国思想 / 謝霊運 / 山水詩 / 異文 / 頂真格 / 修辞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、写本時代から伝えられた古典詩文の異文を、本文校定とは異なる角度から活用する方法を、見出そうとするものである。すなわち、ある異文を支持し伝えた読み手たちの、そう読みたいという欲望と、その欲望を裏打ちしている学識・見識・詩人像・文学観などを探る手だてとして、異文を捉え直す。具体的事例としては、謝霊運詩文の異文を取り上げている。 平成27年度は、研究代表者が、謝霊運の「登江中孤嶼」詩の異文を考察する前提として、「同韻の二聯間における頂真格の修辞――『詩経』から謝霊運まで――」を、2016年1月刊行の『集刊東洋学』第114号109~122頁に発表し、また「「亂流趨孤嶼、孤嶼媚中川」の修辞の系譜――同聯内における頂真格」を、2016年3月刊行の『六朝学術学会報』第17集に発表している。さらに書評で、アンドレ・レヴィ著、中野茂訳、宇野直人注解の『中国古典文学』を取り上げ、2015年5月刊行の『新しい漢字漢文教育』第60号(全国漢文教育学会)P68~68に発表し、フランス中国学の文学史の観点を理解・考察した。研究分担者の齋藤智寛は、「『東北大学附属図書館所蔵中国金石文拓本集:附関連資料』の刊行によせて」を、大野晃嗣・渡辺健哉との共著で、2015年の『東アジア石刻研究』第6号に発表し、「洛陽竜門大廬舎那像龕記」における異文に対する、清・銭大昕と日本・常盤大定の見解を考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「9.研究実績の概要」に示した通り、論文の形で三本を、書評の形で一本を、学術雑誌に発表している。 「平成27年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書」の「平成27年度の研究実施計画」に記した事項に、おおむね即して、研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究を継続し、深化させる。清代の学者たちの、謝霊運詩文の異文に対する見解をとりあげて検討し、それが妥当かどうかを考察して論文に発表する。そののち、調査対象の重点を、20世紀以後の研究者の見解に移し、それらをさらに精密に解析しようと企図している。 研究計画を変更する必要性は、今のところ認められない。研究を遂行する上での課題も、とくに見当たらず、対応策の検討には迫られていない。
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Causes of Carryover |
本研究は、交付が内定したのが平成27年10月であり、交付申請書を10月24日に提出して認められた。よって、それまでは内定されていないと思い、必要物品を自費で購入し、支払い済みであった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ノート型パソコン、中国古典籍データベース、中国古典文学語学関係図書、中国思想宗教関係図書を購入する。学会参加や資料調査の旅費に使用する。また、論文を中国語にする必要があるため、中国語への翻訳者か校閲者を雇い、その謝金に使用する。
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Research Products
(5 results)