2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02456
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北村 卓 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (70161495)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ボードレール / ボードレール受容 / 比較文学 / フランス文学 / フランス文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成27年度および28年度に得られた成果を基にして、第二次大戦後から現代にかけての文化的資料、および異文化受容一般に関する資料を中心に調査・研究を行った。それを踏まえた上で、第二次大戦後から現代まで、日本の文学や文化における幅広いボードレール受容を検討するとともに、その背景となるフランス文化の受容について宝塚歌劇を中心に考察を行った。 まず、詩の専門誌『びーぐる 詩の海へ』から依頼され、平成29年7月、第36号(特集「ボードレールと現代」)に「ボードレールと日本の文学/文化」と題する論考を発表した。また2011年12月にパリ、ソルボンヌ大学で開催されたボードレールの国際シンポジウムにおける発表を元にした原稿 ’Baudelaire dans le monde litteraire japonais’が、平成29年11月、フランスの権威あるボードレール研究専門誌 L’ANNEE BAUDELAIRE の第21号(特集 Baudelaire dans le monde)に掲載された。 平成27年9月22日には、京都大学で開催された国際学会「国際フランス語教授連合アジア・太平洋委員会第4回地区大会」に招待され、’La France de la Revue Takarazuka’ のタイトルで講演を行った。同年10月30日には、立命館大阪プロムナードセミナー「大阪・京都文化講座」に招待され、「宝塚歌劇のフランス・イメージ戦略―『モン・パリ』『ベルばら』から現代まで」と題して講演を行った。 さらに平成27年12月2日には、日本フランス語フランス文学会中部支部大会に招かれ、富山大学の中島淑惠教授とともに「ラフカディオ・ハーンとフランス文学」のタイトルのもとに対談を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年7月に詩の分野を専門に扱う日本の雑誌に掲載された論文「ボードレールと日本の文学/文化」ではボードレールが文学の分野のみならず、近年では映画や推理小説、さらにはマンガにまで及ぶことを示した。また同年11月にフランスのボードレール研究の専門誌に掲載された論文では、とりわけ、永井荷風、谷崎潤一郎、芥川龍之介におけるボードレール受容を詳細に論じており、今後世界におけるボードレール研究のみならず、フランス語圏における日本文学研究の発展にも資すると期待される。 同年9月22日、京都大学における国際シンポジウムで行った講演 ’La France de la Revue Takarazuka’、および同年10月30日の立命館大阪プロムナードセミナーにおける招待講演「宝塚歌劇のフランス・イメージ戦略―『モン・パリ』『ベルばら』から現代まで」では、ボードレール受容研究においてきわめて重要となるフランス文化全体の受容と変容の特徴について、宝塚歌劇を例にその一端を明らかにすることができた。 同年12月2日、日本フランス語フランス文学会中部支部大会において、富山大学の中島淑惠教授とともに行った対談「ラフカディオ・ハーンとフランス文学」では、ボードレールを含むフランス文学の日本における受容において、ハーンが重要な役割を果たしたことを明らかにすることができた。 以上より、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた成果をもとにして、諸外国におけるボードレール受容がどのような展開を見せているのかという視点から、フランス以外の国や地域におけるボードレール受容を調査する。そしてこの調査で得られた成果を分析することによって、日本におけるボードレール受容の特性を明らかにし、本研究の結論を補強する。 また、これまでと同様、ボードレール受容の背景となるフランス文化一般の受容についても、文学だけにとどまらず、芸術や演劇・映画といった領域も射程に入れつつ、同時に研究を進めて行く。
|
Causes of Carryover |
(理由)平成28年度、予定していたフランスへの調査旅行にかえ、パリ第1=パンテオン・ソルボンヌ大学名誉教授のドミニク・シャトー氏を招聘し、講演会を開催したが、氏がすでに他の日本の大学から旅費・滞在費等を支給されていたこともあり、当初予想された支出額が大幅に減じることになった。その減額分が平成29年度にも持ち越され、すべてを消化しきることができなかった。 (使用計画)内外の資料調査をより活発に行うための旅費および調査費に充てる。
|
Research Products
(8 results)