2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02457
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
李 郁惠 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (80399071)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本語文学 / 台湾文学 / 日本統治時代 / 学位論文 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究実施計画どおりこれまでの調査結果を整理し、発表に向けてまとめることに努めた。その成果の一部を、2016年11月5日に台湾の世新大学で開催されたシンポジウム「世新60【日本學】國際學術研討會」で発表した。具体的な内容は下記のとおりである。 発表の目的は、戦後公用語が中国語に変わった台湾社会の中で日本語文学がどう受容されているかを考察することである。方法として、まず日本の状況を分析し、それとの比較を通して台湾における評価の動向を把握した。次に、学術研究上の注目度を確認するために、近年台湾ナショナリズムの気運に乗じて相次ぎ新設された台湾文学研究科の学位論文を調査した。日本統治時代の日本語作品をテーマに取り上げた論文の本数が全体に占める割合から、台湾文学の一部として認められていることが分かった。しかし、テキストの引用に関しては、日本語原文よりも中国語に訳されたものを底本としているのがほとんどである。このことは、言語の断絶により読者がほぼ不在だったという日本語文学の現実を物語っているが、翻訳をめぐる次の問題点が残る。つまり、創作がデリケートな時代で行われただけに、新しい歴史観に沿うべく原作者や翻訳者によって加除修正された可能性がある。ただ逆にいえば、そこから政治的文脈の変遷をたどることができるという点で日本語文学の重要性を強調した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおりに初年度の調査結果を分析した一方、翻訳の出版状況を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、中国語訳が5種類もある王昶雄の「奔流」という作品に絞り、原文と訳文、そして訳本間の異同を確認しながら翻訳の問題点を明らかにする予定である。
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