2017 Fiscal Year Annual Research Report
Translation and Acceptance of Japanese Language Literature in Taiwan
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15K02457
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
李 郁惠 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (80399071)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本語原本 / 中国語訳本 / 意図的改稿 / 台湾 / 日本 / 内地 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、多くの訳者に翻訳されており、高い注目度を誇る点から、王昶雄という作家の「奔流」という作品を取り上げ、翻訳の問題について考察した。 方法としては、まず、1943年7月『台湾文学』3卷3号に発表された当時の日本語版本と、同年11月大木書房刊行の『台湾小説集』に収録された日本語版本の間に顕著な差異がないことを確認した。次に、1979年から2002年の間に出ている合計7バージョンの中国語版本の中には原作者の改訂を経て内容的に大きく異なるものが含まれていることに注目した。これについては、先行研究にも指摘されているように、作者自身が「皇民作家」という民族道徳的批判を避けるための保身策であろうが、ここから訳本が意図的に変更される可能性を1つ目の問題点として挙げた。一方、意図的ではないにしろ、歴史用語や地名など変更されるはずのない固有名詞でも、訳し方によって原作の提示した構図とずれてしまいかねない可能性もある。この2つ目の問題点について、「台湾」、「内地」、「日本」、あるいは「台湾人」、「内地人」、「日本人」といった具体的な訳例を示しながら明らかにした。 この成果は、「日本語作品の翻訳をめぐる問題―王昶雄「奔流」を例に」として、2017年10月29日に韓国の東国大学で開催された「東アジアと同時代日本語文学フォーラム第5回ソウル大会」で口頭発表を経て、2018年3月に『広島大学大学院総合科学研究科紀要Ⅲ 文明科学研究』12号(1-10頁)に刊行されている。なお、2017年6月11日に日本中国語学会2017年度第1回中国支部例会で発表した「台湾文学の使用言語について」も本研究課題の成果の一部である。
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