2016 Fiscal Year Research-status Report
周縁テクスト(注釈・翻訳)の自立性をめぐる歴史的・理論的研究
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15K02458
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
高西 成介 高知県立大学, 文化学部, 教授 (50316147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 善成 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (60364139)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 翻訳 / 注釈 / 中国文学 / アメリカ文学 / 歴史的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画2年目の2016年度は、中国文学に関しては研究代表者が、アメリカ文学に関しては研究分担者が昨年度に引き続き基礎的な資料を整理しつつ、分析を進めた。また研究会を実施し、ゲストスピーカーから情報の提供を受けるとともに、研究発表と活発な議論を通じて研究成果の共有と深化を図った。さらに、「翻訳」をテーマとした公開シンポジウムを開催し、様々な立場から翻訳をめぐって議論を行うとともに、一般市民への研究成果の還元を図った。個別の研究成果については、以下の通りであるが、今年度は研究代表者、研究分担者ともに、「翻訳」に焦点をあてた物が研究の中心となった。 まず高西は、唐代伝奇「定婚店」を取り上げ、テキストと主題について考察を行うと共に、日本における受容に関しても整理を行い、明治以降人々の間にこの物語が流布するにあたって、松井等と田中貢太郎の翻訳の果たした役割の大きさを指摘した。あわせて、『太平広記』「宝」部の訳注を発表した。 山口は、Maxine Hong KingstonのThe Woman Warriorを取り上げた研究発表では、母(中国生まれ)の物語を娘(アメリカ生まれ)が語り直す試みに「翻訳」の構造を見出し、翻訳者としての娘がいかに自分の声を獲得するかを論じた。本来裏方であるはずの翻訳者が自らの声を発することの意義と面白さは、11月末のシンポジウムでも考察することができた。「注釈」のほうの研究については、Washington IrvingのSalmagundiにおける注釈パロディに着目したことをきっかけに、彼のA History of New Yorkについての試論を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度に引き続き、研究代表者、研究分担者とも資料の収集を精力的に行い、順調に研究をすすめている。 また、それぞれの研究資料に基づいた分析も本格化している。9月には高知県立大学に於いて研究会を実施し、それぞれの研究成果を持ち寄り研究発表と討論を行うとともに、同僚の英文学を専門とする鳥飼真人氏にも研究発表と情報の提供をいただいた。これ以外にも、研究代表者と分担者が同じ大学に所属するため、日常的な研究の交流を行い、互いの研究成果の共有と議論を展開することができている。 また、11月には公開シンポジウムを、「海域交流と中国古典小説研究会」と共同で開催した。これは、研究成果を積極的に社会に還元することをねらったものであり、研究者のほかに高知の書店員の方にも登壇いただき実施した。当日は多くの参加があり、文学の面白さと文学研究の成果の社会的還元に大きな成果を挙げることができた。 以上の点を勘案すると、本研究はおおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は、引き続き各人が個別研究をすすめるとともに、それぞれの研究成果を様々な場において発表、公刊する段階に入る。具体的には、高西が六朝期の注釈の創作性について考察を進め、山口は、IrvingのSalmagundiにおける注釈の創作的利用について考察をまとめ成果を出したいと考えている。さらに、本研究の最大の特色である各国文学の枠を越えた文学全般における「注釈」「翻訳」行為の意義について検討するため、研究会を含め日常的な研究交流を実施し、個別の成果の有機的結合を図りたい。これまで主として注釈と翻訳の創作性について理論化を試みてきたが、いかにそれを実践に結びつけるかが総括の鍵となろう。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた研究分担者の海外調査を、予定通り実施できなかった。次年度使用額が出たのは、この理由による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度予定していた調査を、次年度実施する。
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Research Products
(9 results)