2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02460
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Research Institution | Tokyo Junshin Women's College |
Principal Investigator |
大竹 聖美 東京純心大学, 現代文化学部, 教授 (60386795)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 朝鮮 / 童謡 / 詩 / 近代 / 韓国 / 植民地 / 児童文学 / 児童文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国近代童謡の先駆者である李元寿、尹石重が登壇するきっかけをつくった『オリニ』は方定煥が創刊した韓国初の本格的児童文芸誌である。この『オリニ』創刊期をめぐる動きについて、方定煥の伝記的研究をすすめた。今年度の研究成果は、「1919年前後の方定煥――<小波(ソパ)>の由来と3・1独立運動~評伝『小波・方定煥の生涯――愛の贈り物』を読む~」(東京純心大学『紀要』第20号、大竹聖美単著、平成28年3月15日、pp.9~pp.28)にて発表した。
方定煥の研究を進める中で、方定煥を理解し、その児童文化活動を理解するには方定煥の義父であるが孫秉熙が教祖である天道教を理解することが不可欠であることを強く認識した。さらに、孫秉熙や方定煥が3・1独立運動にも深くかかわっていたことを知りながら、その独立宣言書に署名した民族代表33名のうち約半数が天道教徒でありキリスト教徒であったことや、その他近代韓国に大きな影響を与えた宗教団体として天道教の他キリスト教があることにも考えが及ぶようになった。そこで改めて、キリスト教が近代韓国に与えた影響を調べていくうちに、近代韓国児童文学の理解においても、その先駆者である方定煥と天道教同様にキリスト教の理解、キリスト教児童文学者の理解も必要不可欠であることに気が付いた。この点は、研究計画を立案する段階では見えていなかった点であり、大きな研究の進展である。そこで、今年度は方定煥研究と並行して、キリスト教児童文学者研究にも着手し、その成果は「日韓キリスト教児童文学研究」(東京純心大学こども文化研究センター、大竹聖美責任編集、平成28年2月29日)として公刊することができた。これは研究計画には書かなかったことだが、大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
方定煥の研究を進める中で、研究計画立案当初には考えおよばなかった近代韓国児童文学におけるキリスト教の重要さに気が付いた。そこで、今年度は方定煥研究と並行してキリスト教児童文学者研究にも着手し、その成果は「日韓キリスト教児童文学研究」(東京純心大学こども文化研究センター、大竹聖美責任編集、平成28年2月29日)として公刊することができた。これは研究計画には書かなかったことだが、大きな成果である。 重要な近代韓国児童文学者のうち、キリスト教の信仰を持っていた者とその代表作は次のとおりである。①田榮澤(1894.1.18~1968.1.27)小説家、牧師「平和の王様」、②朱耀燮(1902~1972)小説家「ツツジとオクスニ」、③馬海松(1905.1.8~1966)「岩百合と赤ちゃん星」、④姜小泉(1915.9.16~1963.5.6)童謡・童詩人、童話作家、少年小説家「夢を撮る写真館」、⑤朴木月(1916.1.6~1978.3.24)詩人、童謡作家、童詩人「まだらの仔牛」、⑥尹東柱(1917.12.30~1945.2.16)詩人、童詩人「おねしょの地図」、⑦林仁洙(1919~1967.7.31) 童詩人、詩人、童話作家「春が来る夜」⑧朴和穆(1924.2.15~2005.7.9)詩人、童謡・童詩人、童話作家、少年小説家「麦畑」、「果樹園の道」⑨金耀燮(1929.4.6~1997.11.3)詩人、童話作家「明星とお母さん」 上述の通り、今年度は、近代韓国児童文学史における重要作家であり、キリスト教を信仰していた作家(①~⑨)について調査し、代表作を翻訳し、資料集を作成できたことが計画以上の進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
方定煥研究に関して、ソウルにおいて、韓国児童文学学会会員による方定煥研究および方定煥が刊行した雑誌『オリニ』の原典を読む研究会が発足され、第一回研究会が2016年3月にソウルの国立青少年オリニ図書館にて開催された。この第一回研究会に私も参加し雑誌『オリニ』の創刊号を原典講読し、意見交換した。 雑誌『オリニ』の原典講読作業は、ハングル表記法が古典的だったりするため、外国人研究者にとっては単独では非常に困難な作業である。しかし、現地の研究者と共同作業することで非常にスムーズかつ効果的に作業を進展させることができた。 今後も定期的に開かれるこの研究会に参加する機会を設け、方定煥研究ならびに近代韓国児童文学研究を継続して開拓していく予定である。 また、平成28年度は台湾の台東大学児童文学研究所にてアジア児童文学大会が開催されるため、この国際大会にて本研究の成果を発表し、韓国の研究者や中国・台湾の研究者との意見交換、情報交換を予定している。
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Research Products
(2 results)