2016 Fiscal Year Research-status Report
比較植民地文学研究の新展開--「語圏」概念の有効性の検証
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15K02462
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西 成彦 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (40172621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 帝国の言語 / ディアスポラの言語 / 語圏 / 引揚げ / 滞留 / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は、「日本語圏文学」に関して、多方面で精査することができた。とりわけ『引揚げ文学論序説』(人文書院)を出されたばかりの朴裕河氏(韓国・世宗大学)を囲んだ研究会では、「引揚げ文学」と「在日文学=旧植民地系の未引揚げ者の文学」とを同じ枠組みの中で論じることの必要性や、さらには「フランス語圏」や「ドイツ語圏」の「引揚げ者=帰還者=被追放者の文学」ともつなげて論じるという当初からの着想の有効性を確認できた。前年度が台湾を中心にした研究が中心であったのに対して、当年度は朝鮮半島と「日本語圏」との関係を掘り起こせたのが大きな収穫である。 また、立命館大学国際言語文化研究所のプロジェクトと連携して進めている「低緯度アメリカ地域の文学」に関しては、「英語圏」「フランス語圏」「スペイン語圏」相互の連携を通じた「環カリブ海圏」の生成を視野に入れることができるようになった。「環カリブ海文学」の研究は、いまだ「語圏」の壁が大きいが、少しずつ状況は変わってきているように思う。 他方、プルーストとジョイスとゴンブローヴィチを比較した論考では、モダニズム文学における言語の問題にも踏み込むことができ、「語圏」をめぐっての今後の研究にとって有意義なワンステップを記すことができた。 これら「語圏」と「語圏」の境界をまたいだ「比較文学」の手法は、いわゆる「ポストコロニアル文学」の「世界性」を考えるうえでも重要である。 これまでに得た知見を次年度の研究に活かしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「日本語圏文学」に関しては、平成29年度中に単著を刊行予定であり、また朴裕河氏を囲んだ研究会の記録は『立命館言語文化研究』に残すことが決まっている。 また「環カリブ海文学」に関しても、国際言語文化研究所のプロジェクトの成果を上記『立命館言語文化研究』の特集記事として残すことが決まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
「日本語圏文学」に関しては単著を刊行するほか、「環カリブ海文学」に関しても単著を準備中である。そして、今後はアフリカ大陸にも視野を広げ、「語圏」概念の有効性を試してみたいと思っている。
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Causes of Carryover |
本年度の研究は予定通り進めることができ、残額は微額であるため、次年度に繰り越したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は次年度の交付額と合わせて、物品購入等に使用予定である。
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Research Products
(2 results)