2015 Fiscal Year Research-status Report
ロマンス語における定の決定詞の対照研究―決定詞体系の再構築にむけて―
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15K02465
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 健 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50292074)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 定冠詞 / フランス語 / スペイン語 / イタリア語 / ルーマニア語 / ロマンス諸語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ロマンス諸語の中でフランス語・イタリア語・スペイン語・ルーマニア語における定の決定詞を比較検討し、従来注目されることのなかった四言語間の相違点を体系的に整理し説明することを目的とするが、本年度は定の決定詞の中でも最も重要な定冠詞についての分析を進めた。 具体的には、原典テクストと翻訳テクストを対照し、決定詞の対応関係を整理した上で、それぞれのテクストで定冠詞が用いられているか、言語間で異なる要素が用いられているかという点に着目し、分析を進めた。 本年度は、フランス語とスペイン語、フランス語とイタリア語の定冠詞についての分布を観察し、それぞれの言語にみられる共通点・相違点を明らかにした。特に、定冠詞が別の定の決定詞、たとえば所有形容詞や指示形容詞に対応している例については、詳細に検討し、それぞれの言語の定冠詞の機能に関する違いについても考察を進めた。その結果、スペイン語及びイタリア語の定冠詞がフランス語の所有形容詞に対応する例が一定の割合で観察された。フランス語とイタリア語については、フランス語の定冠詞にイタリア語のゼロ冠詞が対応している例、及びイタリア語の定冠詞にフランス語の不定冠詞が対応している例が一定数見られた。更に、フランス語とスペイン語については、定冠詞にゼロ冠詞が対応している例について両言語において文法機能上の差異が見られた。以上のことにより、対象とした言語の定冠詞の分布は完全に一致することはなく、機能的にある程度の違いが見られることが明らかになった。同一の言語グループに属するといえども、文法的要素である定冠詞が完全に同じ機能をもつとは限らないことが示された。 更に、フランス語とルーマニア語についてもデータ収集の作業を進めており、次年度における分析のための基本的なデータを作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、フランス語とルーマニア語の定冠詞に関する対照分析が本年度中に終了している予定であったが、定冠詞のデータの収集に予想以上の時間を費やし、現在は両言語についてのデータ収集を進めている段階である。このように作業が遅れたのは、予想以上に異なる要素に対応する例が多く、カテゴリーの分類にかなりの時間がかかったためである。このような状況は実際にデータを収集して初めて判明するものであり、今後の研究に生かしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めているフランス語とルーマニア語のデータ収集が終了し次第、分析を進め、成果として発表する。これに続いて、スペイン語とイタリア語、スペイン語とルーマニア語という順に作業を進めていく。定冠詞はデータ数自体が相当な量に及ぶので、28年度中に定冠詞の分析をすべて終えるのは非常に難しいと言わざるを得ない。最後のペアであるイタリア語とルーマニア語の分析については、現在のところ29年度に行うことを見込んでいる。
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Causes of Carryover |
研究遂行に必要な海外に発注する図書の納入に時間がかかり、年度内に購入できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要な海外の図書購入にあてる予定である。
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Research Products
(2 results)