2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of the Person Case Constraint Effects in Japanese
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15K02467
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大厚 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (00272021)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人称格制約 / 空代名詞 / 項削除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、いわゆる人称格制約(the Person Case Constraint)の効果が日本語にも観察されるのかどうかを明らかにし、当該効果の日本語における存在もしくは非在の理由を説明することであった。これにより、普遍的とされる人称格制約効果の普遍性を検証するとともに、日本語における関連する機能範疇の投射を含めた拡大動詞句の構造、1人称(話者)、2人称(聞き手)及び3人称の代名詞類の認可の方法を詳細に調べ、関連する普遍文法の原理・操作やパラメーターの精緻化に貢献することを目指した。 研究期間中に当該現象に関する文献調査を行なったが、日本語に関する研究で公表されているものは見当たらなかった。その意味で本研究には新規性があったと言える。 また、スペイン語など従来詳細な調査が行われている言語のデータをもとに、対応する日本語の例文を作成し、それらの容認度を日本語母語話者に判断してもらった。使用した例文は以下のようなものである。(1) 友梨奈が秋元に私を推薦したそうだ。-- 友香も彼に {私を/[e]} 推薦したらしい。(2) 話者A: 「私は秋元先生に会いたいの。」-- 話者B: 「友梨奈が彼に {君を/[e]} 紹介するそうだよ。」 (1)と(2)の2つ目の例文において、与格目的語「彼に」が存在し、対格目的語は(1)では1人称、(2)では2人称になっている。スペイン語など人称格制約が働いている言語では非文となる構造であるが、これらの日本語文は悪くなっていない。特に、スペイン語などのいわゆる弱形代名詞に相当すると考えられるゼロ形([e])であっても十分容認される。このことから、日本語では人称格制約の効果が観察されないと結論づけられる。これは、日本語の空項が(弱形の)空代名詞ではなく、項削除により派生されるという仮説を採用すれば説明することができる。
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Research Products
(1 results)