2017 Fiscal Year Research-status Report
Malayo-Sumbawan言語における定性標示と文構造との関係に関わる研究
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15K02472
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
塩原 朝子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (30313274)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マレー語 / 定性 / 指示詞 / 所有表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度予定していたチャム語・ササク語の定性表示に関する文献調査を行なった。(当初予定していた現地調査は、公刊されている文献・データを検討することで代替可能であることがわかったため行わなかった。)その結果、これらの言語では、定性はもっぱら指示詞によって標示されることがわかった。 また、マレー語の調査を継続し、学術論文として完成させた。具体的には、昨年度から進めていた標準インドネシア、口語インドネシア語ジャカルタ方言、マナド・マレー(北スラウェシマナドで話されているマレー語の変種)に加えて、インドネシア東部で話されている変種(クーパン・マレー、パプア・マレー、テルナテ・マレー)に関する文献調査と聞き取り調査を行った。文献調査にはすでに公刊されている文法書における記述とともに、出版されているテキストも用いた。Hawkins(1978)によれば、英語の定冠詞が持つ機能は大きく分類してdirect identifiabilityの標示(発話の場に存在する事物や談話にすでに導入された事物の指示)とindirect identifiabilityの標示 (より広く話者と聞き手が共有する談話の世界全体に属すると判断される事物の指示)に分類されるが、マナド・マレーにおいては、指示詞に由来するtuが前者を、三人称の所有代名詞であるdepeが後者を担うということがわかった。このようなストラテジーは、その他のインドネシア東部の変種のうち特にテルナテ・マレーと共通していることもわかった。これらの点を国際学会で発表を行うとともに、学術論文の形で公刊した。 Hawkins, John A. 1978. Definiteness and indefiniteness: A study in reference and grammaticality prediction
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Malayo-Sumbawanグループに属する言語のうち、予定されていたバリ語、ジャワ語、マレー語(標準語とその変種)、チャム語、ササク語、スンバワ語に関して定性標示の様相が明らかになった。また、特に定性標示が発達しているバリ語・マレー語に関する記述・分析がほぼ完成し、昨年度と今年度に学術論文の形で公刊することができた。以上のことから概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までにMalayo-Sumbawanグループに属する言語の定性標示の様相がほぼ明らかになったことに基づき、今年度からは各言語・変種における定性標示と文構造の分析を行う。申請時には仮説として、能動態・受動態の対立の有無と定性標示の有無の相関関係をあげたが、これまでの観察によると、その仮説は少なくとも直接的には当てはまらないことがわかってきた。今年度はこの点を明確にするとともに、一つの言語や変種の中で定性標示が起こる環境について実際の発話資料によって明らかにする。
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Causes of Carryover |
予定していた海外での調査を行う必要がなくなったため。次年度使用額は、これまで収集したデータを分析可能な形にするための加工や成果発表のための海外出張に用いる予定である。
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Research Products
(2 results)