2019 Fiscal Year Annual Research Report
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15K02472
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
塩原 朝子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (30313274)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 形態統語論 / マレー語 / インドネシア諸語 / 談話論 / 定性表示 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度である令和元年度には、これまで行ってきた研究の総括として、スンディック諸語の定性表現と文構造の関係の包括的記述を行った。また、平成30年度以降重点的に行ってきたスンバワ語とマレー語諸変種の調査を継続し、その成果を国際学会「インドネシアの言語と言語学」で発表した。 研究機関全体を通して行った研究の概観は以下の通りである。 (1) スンディック諸語のうち、バリ語、ジャワ語、ササク語、スンバワ語、マレー語諸変種について各言語に見られる定性標示の様相を以下の形で包括的に記述した。 ・上記の言語の中には義務的な定性標示を行うものと行わないものがある。バリ語、ジャワ語は前者に分類され、ササク語、スンバワ語は後者に分類される。マレー語は変種により義務的な定の表示を持つものと持たないものに分かれる。標準インドネシア語、マレー語など多くの変種は定の標示を持たないが、口語インドネシア語、マナド・マレーは3人称属格クリティックに由来する定性を示す決定詞により定性標示を義務的に行う。義務的な定性標示が行われる言語において、定の名詞句は現場指示や前方照応などいわゆる「直接指示」だけでなく、直接指示の対象から連想されるものを指すいわゆる「間接指示」も行う。義務的な定性標示の手段を持たない変種でも、指示詞によりいわゆる直接指示を義務的に行うものが多い。ただし、これらの言語・変種による指示詞あるいはその派生形が、「間接指示」を行う例は確認されていない。 (2) 研究当初の仮定である各言語における義務的な定性標示の有無と文の構造の相関関係は見られないことがわかったが、マレー語の変種において、定性を持つ動作主と動詞との文法的一致の発達の端緒と言えるような現象が発達中であることを発見し、コーパスの検討によりその様相を明らかにした。また、定性標示の有無と主語と述部の相対的語順には相関関係があることがわかった。
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Research Products
(5 results)