2015 Fiscal Year Research-status Report
ヌートカ語における統語構造の特性―節と節結合の連関の中で
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15K02473
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中山 俊秀 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (70334448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 久美子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (40401426)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヌートカ語 / 北米先住民言語 / 危機言語 / 統語論 / 節結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カナダの先住民言語であるヌートカ語における統語体系の特性を、「節」と「節結合」の構造的・意味機能的性質の精査を通して明らかにすることを目的とするものである。統語法研究の中ではしばしば節が中核的単位・ドメインとして位置づけられるが、ヌートカ語の統語法においては節の役割はかなり限定されており、それを補うために節結合(clause combining)が多用される。そこで、本研究では、節中心の統語法についても、節と節結合の関係性についても通言語的に普遍ではなく言語差があることに着目し、従来の統語法研究で想定されてきたものとは異なった性質を見せるヌートカ語の統語法の詳細な分析を進める。 初年度の平成27年度には、まず言語資料から本研究の分析対象となるデータを抽出し、コーディング、データベース化の準備を行い、抽出された節および節結合の用例について、構造的特性および談話における意味・機能面から基本的なコーディングを進めた。 データは、まず小規模のデータセットを試験的に入力してから、データベースの仕様調整を行い、仕様を確定させた。データベースはインターネット上のサーバーに構築し、研究代表者と研究分担者が常時オンラインで共同作業ができる体制を構築した。データベース化が済んだ用例を基に節および節結合の暫定的な構造特性分析とタイプ分類を開始している。 以上の通り、研究活動は当初の計画通り順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成27年度には、まず言語資料から本研究の分析対象となるデータを抽出し、コーディング、データベース化の準備を行った。これまでに収集されたテキスト資料および聞き取り調査資料をコーディングに適したフォーマットに加工し、該当する用例を抽出した。その上で、本研究の必要なテキスト資料と体系的語彙・文例資料の拡充をはかるためカナダで現地調査を行った。 抽出された節および節結合の用例について、以下の要領で構造および機能面から基本的なコーディングを進めた。節については、内部構造上の特性(述語の意味カテゴリー、表現されている直接項の数、文法役割、位置)および談話の中での出現様態(単独か他の節との組み合わせか)と意味機能に関してコーディングの仕様を確定させ、コーディング作業をすすめた。節結合の用例については、構造的特性(結合順、節に付加できる接辞、並立・従属関係)、文構造の中での位置、および談話における分布と機能(談話の中での位置、意味機能)に関してコーディングの仕様を確定させ、コーディング作業をすすめた。 データは、まず小規模のデータセットを試験的に入力してから、データベースの仕様調整を行い、仕様を確定させた。データベースはインターネット上のサーバーに構築し、研究代表者と研究分担者が常時オンラインで共同作業ができる体制を構築した。データベース化が済んだ用例を基に節および節結合の暫定的な構造特性分析とタイプ分類を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度に仕様を確定させたコーティング方法に従い、用例データの入力を進めていく。平成28年度の終わりにかけてテキスト資料30編からの用例とその構造および意味機能特性をデータベースに加え、年度末までにデータベースを完成させる。 データ分析を進めつつ、研究活動で明らかになった問題に関する追加調査、および研究資料の収集のために2週間から3週間程度の現地調査を行う。 データベースを基に節および節結合の構造特性分析とタイプ分類を完成させる。また、論理的に同等の意味が節と節結合とで表現できるケースに関して用例を集め、節と節結合の間の構造選択のパターンを分析し、節と節結合の意味機能上の役割分担のあり方を解明する。 本研究で進めたヌートカ語の節および節結合の特性と節-節結合の関係性について、英語とも対比させながら、理論的議論をまとめる。また、従来の「節」中心の統語法記述枠組みに代わる枠組みを提案する。
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Causes of Carryover |
現地調査として予定していた時期に国際学会での発表が重なったため、調査期間を多少短縮する必要が出てきたため、使用額が予想を少し下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
参加予定の国際学会が増加する予定であるため、その旅費に充当する予定である。
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