2017 Fiscal Year Research-status Report
時空間の連続性に基づく自然言語理解のモデル化と自然言語処理技術への応用
Project/Area Number |
15K02475
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
近藤 真 静岡大学, 情報学部, 教授 (30225627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 達裕 静岡大学, 情報学部, 教授 (30234800)
小暮 悟 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40359758)
野口 靖浩 静岡大学, 情報学部, 講師 (50536919)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文脈参照 / 構文意味理解 / 自然言語処理 / 語用論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、構文意味解析器による文脈情報利用のための手法を開発している。本研究で用いる構文意味解析器は、構文解析と意味理解を融合し、文脈情報を参照しながら、入力文が持つ統語情報に加えて、意味情報・文脈情報を考慮して入力文の構文構造を決定すると同時に、入力文の意味表現を生成している。 先行研究において開発された意味表現手法は、内容語の意味を「属性・値」対の集合として記述し、語の係り受けに基づく意味の限定を、被修飾語が持つ特定の属性の値から、その属性値を決定する修飾語意味表現へのポインタとして表現している。これにより、「属性・値」対を単位として意味の比較・相互参照を行うことで、統語的修飾・被修飾関係に基づく意味の限定と、直接的には係り受け関係を持たない要素間の意味の限定を一様な手続きで解釈することが可能になっている。その一方で、この意味の比較・相互参照は、対象となる概念間の上位下位関係、全体部分関係に基づくものとなっており、そのような関係にない概念間での意味の比較・相互参照が実現できないという問題を抱えていた。 本研究では、特定の現象Pに伴って連続して生起し得る現象列p1...pnをあらかじめ連続現象モデルPMとして定義し、PM内の現象間での意味の限定を、先行研究における意味理解手法に準じて定義しておく。これにより、上位下位関係や全体部分関係にない現象pmとpm+1との間での時間、及び場所等に関わる属性値の伝搬が可能となる。 本年度は、既に開発されていた旅行行為連続現象モデル以外の連続現象モデルとして、料理行為連続現象モデルを開発した。料理行為に含まれる現象間の関係には、旅行行為に含まれる現象間では見られなかった制約が必要になる場合があり、料理行為連続現象モデルの開発を通して、これまでの枠組みでは捉えられなかった現象間の関係を解釈することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究で旅行行為連続現象モデルの開発が一段落し、旅行行為とは異なる連続現象モデルの開発対象として料理行為が選定された。これを受け、本年度は新たに料理行為連続現象モデルを開発した。料理行為連続現象モデルの開発に際して、204件のレシピを収集し分析を行った。旅行行為連続現象モデルの開発を通して、料理行為においては、旅行行為とは異なった現象間の制約が存在する場合があることが明らかになった。例えば、ある種の生産物(みじん切りにしたタマネギ、混ぜ合わせた調味料等)が、特定の行為p1の結果として産出され、それが後に続く行為p2の対象となる場合には、p2の行為対象はp1の行為対象と全く同じというわけではなく、p1という行為によってp2の行為対象の状態が変化している(例えば、切られる前のタマネギの状態から、みじん切りにされたタマネギへと状態が変化する)。このような現象間の行為対象の状態変化は、旅行行為に頻出する移動行為、乗車行為、宿泊行為、購入行為、飲食行為などの現象間では観察されることが稀であり、旅行行為連続現象モデルの開発では見過ごされてきた。こういった事例をもとに、連続現象モデルで用いられる意味表現の属性の再検討を行った。その結果、連続するp1、p2、p3といった調理行為の行為対象に関して、p2、p3の行為対象が、それぞれp1、p2の成果物であることを認識可能になった。 料理行為連続現象モデルの開発を通して、これまでの枠組みでは捉えきれなかった現象間の関係を捉えることが可能になり、より汎用的な連続現象モデル開発のための検討が一歩進んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を通して、旅行行為連続現象モデルの開発と料理行為連続現象モデルの開発を完了した。旅行行為連続現象モデルでは、1つの移動行為と0~n個の旅行部分行為(飲食行為、購入行為等の目的地で行う行為)からなる旅行部分移動行為を基本単位とし、1~m個の旅行部分移動行為を束ねるかたちで1つの旅行行為が構成されること、さらに、その旅行行為(場合によっては複数)と1つの旅行帰還行為で1つの全体旅行行為が構成されるというモデルが有効であることが判明した。一方、料理行為連続現象モデルにおいては、複数の材料用意行為を束ねる材料用意行為群、複数の調理行為を束ねる調理行為群を設定し、材料行為群、調理行為群、料理終了行為の3要素を用いて全体料理行為をモデル化することが有効であることがわかった。 以上の検討から、汎用的な連続現象モデル開発においては対象となる現象の基本単位の認定が重要であることと、基本単位となる現象(群)を適切に設定することにより、全体現象を比較的簡便なかたちでモデル化できるとの見通しが立ったと考えている。 計画最終年度にあたる次年度においては、これまでの研究成果をもとに、複数の連続現象モデル間の意味の比較・参照方法を中心に検討を進める。
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