2015 Fiscal Year Research-status Report
日本語における否定真偽疑問文の意味・文法・音韻的性質
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15K02476
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大島 義和 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (40466644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ホワン ヒョンギョン 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・対照研究領域, 非常勤研究員 (80704858)
伊藤 怜 三重大学, 人文学部, 特任講師 (80755736)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 否定極性疑問文 / 認識的バイアス / 情報構造 / 音調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語否定真偽疑問文には (1) 肯定バイアスを伝達し、否定辞を含む語が音調的に際立ちを持たないもの (P型) と、(2) 否定バイアスを伝達し、否定辞を含む語が音調的に際立ちを持つもの (NN型) の2種類があるという観察を出発点とし、それぞれの型の音調・意味的性質の記述・分析を行うことと、日本語 (標準語) データの観察から得られた知見をふまえ、他言語・他方言との対照を行い、類型論的な検討を行うことを目標としている。 今年度は、P型とNN型の音調的対立のより正確な理解のため、先行文献の検討、仮説の構築、および実験による検証に取り組んだ。P型における否定辞を含む語における音調変化の抑制には、文末の要素が情報構造的な非焦点である場合に、その音調が抑制されるという一般現象 (post-focal reduction; 焦点後部位置抑制) の影響が考えられる。一方、『甘いだろう』という予期を伴って発話される、「甘くない?」(あるいは「甘くね?」)のようなP型疑問文における「ない」の音調は、焦点後部位置抑制から予期されるものとは異なる、否定辞のアクセント核が完全に消失したもの (浮き上がり音調、とびはね音調といった名称で呼ばれる) になる場合がある。実験では、「甘くない?」「甘くないですか?」「手伝ってもらわなかった?」のような疑問文のバリエーションを、11名の標準語話者に産出させ、その音調を検証した。その結果、アクセント核の消失は述語が「形容詞連用形+ナイ」の形式の場合に限定され、動詞や丁寧の助動詞を伴う述語の場合には、起こらないことが確認された。また、あわせて、NN型であっても、本動詞のアクセント型が平板の場合、P型との音調の対比がほぼ失われる場合があるという観察が得られた。 上記の内容を含めた内容を、論文にまとめ、学術雑誌への投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の知見をふまえ、研究分担者間で議論を行うことで、P型疑問文・NN型疑問文の音韻的性質に関する仮説を精緻化することができた。 また、仮説を検証するための実験を実施し、結果に基づいて投稿論文をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
認識的モダリティの意味論的分析に関する先行研究に対する理解を深め、否定極性疑問文の伝達する認識的バイアスの正確な記述に取り組む。特に、終助詞「ね」、助動詞「の(だ)」を含む極性疑問文が認識的バイアスを伝達する場合との対照を行う。 英語・韓国語といった他言語における否定極性疑問文の持つ音調的性質および情報構造的性質についての検討を開始する。
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Causes of Carryover |
物品購入にあたり、当初の見積もりより安価に入手できるものがあったため、わずかな差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、文具等の消耗品の購入にあてる。
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