2017 Fiscal Year Research-status Report
ニューギニア諸言語の動詞形態調査-マダン州おけるテンス・アスペクトの記述-
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15K02478
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
野瀬 昌彦 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20508973)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パプアニューギニア / アメレ語 / ベル語 / 時制 / アスペクト / 形態論 / 対照研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度も引き続き,パプアニューギニアでの現地調査を8月末から実施し,アメレ語とベル語,トクピシンを中心に多くのデータを収集すると共に,新たにダミ語とマリク語の話者が住む村を訪問することができた.文献調査でも,マダン州で話されている言語である,コボン語やワスキア語,タウヤ語等の文法事項の整理をし,対照研究に向けての準備を行った.時制が豊かな言語と時制がない言語の対照と,完了相と習慣相に関する研究を進めた.そのような研究の結果を,ギリシャと中国の2つの国際学会で発表することができた. ここまでの研究において判明した点を示す.パプアニューギニアのマダン州では,270言語ほどの現地語が話されていて,本研究では,実際に8-10言語近くの村を訪問し実際の状況と基本データを聞き取ると共に,20言語近くの記述文法の文献を入手し,それらの時制とアスペクトの振る舞いを観察してきた.同時に,言語類型論的な観点から,他の言語で時制やアスペクトが豊かであるフランス語やロシア語,逆に時制がない言語であるグナ語(バヌアツ)や中国語のデータを対照研究の対象として選択し,研究を進めた.そのような対照を通して,マダン州のニューギニア系言語の時制とアスペクトの振る舞いを,形態論的な点で整理し把握することができた.英語や他の世界のメジャーな言語とは異なるが,アメレ語やコボン語の時制やアスペクトは,世界的に見てもそれほど珍しい振る舞いはしないが,時制や形態論的な複雑性をうまく説明する手段を探る必要がある. 時間に関する哲学書等も参照しつつ,言語と時間の関係を実際の文法使用を観察した上で,上手く説明できるよう,研究を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
育児と介護をしながらの研究で,なかなか時間が取れないが,夏休み等の授業がないときに集中して研究を進めた結果,ここ2年の研究の遅れを取り戻すことができた.データがかなり集まり,分析が進んだことで,今年度は学会発表と論文執筆を満足する形で進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
時制に関する議論を進めることができたので,今後は,完了相と習慣相のアスペクトに関する調査を実施したい.マダン州の言語だけでなく,他の言語のデータも参照し,言語類型論的な研究を進めたい.
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Causes of Carryover |
本年度は現地調査の期間が短く,思ったほど旅費がかからなかった点と,物品費やその他の費目も使用しなかった.これは,次年度の旅費や学会発表のために使う計画である.
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