2015 Fiscal Year Research-status Report
エスキモー語からみた指示詞と名詞化の共通概念基盤に関する認知類型論的研究
Project/Area Number |
15K02479
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 幸誠 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (30397517)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 名詞化 / 指示詞 / ユピック・エスキモー語 / 認知言語学 / 機能類型論 / 脱名詞化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究テーマにおける名詞化(以下nominalization) に特に焦点を絞って研究を行った。ユピック・エスキモー語の調査で特に明らかになったことは、文法化において、脱名詞化(以下denominalization) とよべる現象があることである。類型論的に見た場合、段階的に動詞がnominalizationしていく場合と動詞がまずnominalization をおこし、その結果、再述語化として、denominalization を起こす場合と二つのパターンがあると考えられる(ユピック・エスキモーは後者)が、その二つの記述が混同されている可能性があり、そのことに焦点をあてた研究を進めてきた。まだ研究途中であるが、一部の成果を国際類型論学会で発表した。また、二つの論文にまとめた(一部は印刷中)。指示詞の研究はTamura (2014)を発展させるための下調べを行っている段階であり、来年度、informant調査を集中しておこないたいと考えている。 アラスカ州において、ユピック・エスキモー語の調査をJohn Toopetlook (アラスカ州のLanguage assitant coordinatorをなされている)さんの協力で2度行った(8月は1週間、3月は10日間、1日2時間半)。また、アラスカ大学フェアバンクス校においてGwich’in語(アサバスカン)を教えているHishinlai'(Gwich’in 母語話者)を紹介していただき、今後の研究の相談をした。エスキモー語とアサバスカン諸語の比較は将来の課題であるが、ユピック・エスキモー語の調査の過程で将来の可能性も開けたことは大変有意義であったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ユピック・エスキモー語の調査に関して、8月と3月の調査でのべ約50時間John Toopetlook 氏協力をいただき、順調に進んでいる。またその成果も一部ではあるが、2編の論文(一つは印刷中)、一つの国際学会で公開することができた。来年度も同じ調子でinformant調査ができれば、もう一つ上の成果が期待できるように考えている。現在はまだ報告論文の段階であるので、(2) という評価を行った。また来年度秋に国際学会での発表を考えているが、それの合否はまだ連絡されていない段階であり、来年度、今年度のように同じ研究分野の研究者と研究発表を通じて意見交換できるかまだ現段階では未定であり、それも(2)という評価をした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度(2016)は、現在の芽の出かかっている名詞化研究をさらに発展させると同時に、指示詞の現地調査を積極的におこないたいと考えている。現地調査は9月に2週間、3月に2週間を予定している。今年度未完成な部分とあわせてこの現地調査の間に国際学会で発表できればと考えている。また、その成果を報告論文とあわせて今まで以上に生産的に発表したいと考えている。現地調査を行った名詞化研究、特にdenominalization というアイデアを国際学会で発表すること、これまで行ってきた指示詞の研究をinformant調査を通じてrefineしていくことが今年度の目標である。
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