2016 Fiscal Year Research-status Report
言語類型論の視点からみた日本語史の項表示の変遷:通時コーパスを利用した実証研究
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15K02502
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳田 優子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20243818)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アラインメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,国立国語研究所の歴史コーパスを使用して,日本語8世紀から17世紀までの資料を中心に格助詞「ガ」「ヲ」の変化について調査した.日本語は8世紀頃までに,格システムが活格型から対格型へ変化したと考えられる.格システムは言語類型論的にアライメントとよばれ,主格・対格型,能格・絶対格型,活格型の3つのタイプからなる.世界の言語のアラインメントを観察すると,ひとつのアライメントから他のアラインメントに変化することが観察されている.格システムは言語の骨格のような特徴があり,アラインメントが変化するとその言語を特徴づける主要な文法システムが劇的に変化する.しかし,アラインメントの変化を見るためには,数千年にわたる歴史資料が存在する言語からの実証的調査が必要である.日本語は歴史的にも資料が豊富な言語のひとつでああるが,こうした言語類型論的観点からの日本語史の研究の取り組みはまだ国内ではほとんど行われていない.世界の言語をみると,アラインメントの変化を引き起こすトリガーになる要素は何かに関して,生成文法理論や言語類型論など,理論的枠組みを超えて多くの研究がある.本年度は,日本語の8世紀から12世紀頃の資料から心理動詞が選択する項構造の変化に着目し,研究をすすめてきた.8月にアメリカで開催される国際歴史言語学会で,研究成果を発表する.本学会では,アラインメントの変化に関するワークショップを行い,日本語における変化と他言語との比較研究を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題で,8世紀から16世紀までの日本語の変化を国立国語研究所で公開している歴史コーパスを使用して,実証研究を行った.特に,格助詞の「ガ」と「ノ」の分布を調べ,言語類型論の観点から調査を進めた.国立国語研究所の日本語歴史コーパスは形態素のタグは付いているが,文法タグがついていないため,隣接関係のある語だけしか検索ができない.本研究課題では,統語情報を付加した歴史コーパスを,オックスフォード大学の研究者と共同で整備を進めてきたが,タグを付加するための研究協力者と予算の不足が生じ,コーパスの整備が遅れているため,データの収集に時間がかかっている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,国立国語研究所の歴史コーパスを使用し,格助詞の変化と統語構造の変化についてさらに詳細な調査を行い,格助詞の変化が起こる誘因について調査する.また,日本語の変化だけではなく,言語類型論の観点から,特に先行研究が多くあるイラニアン諸語における格助詞の変化と比較研究を行う.8月にはアメリカで開催される国際歴史言語学会で,イラニアン諸語,カリブ諸語における格変化の専門家と共同でワークショップを行うことが決定している.研究成果は9月にまとめて,著書にする計画を立てている.
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Causes of Carryover |
研究の遅れによる
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は,国際学会発表のため,海外出張がある
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Research Products
(4 results)