2015 Fiscal Year Research-status Report
小倉進平による朝鮮語方言資料の言語地図化と言語地図作成ソフトウェアの開発
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15K02504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福井 玲 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50199189)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 朝鮮語 / 韓国語 / 小倉進平 / 朝鮮語方言の研究 / 言語地図 / 言語地理学 / Seal |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,次の3点に関して研究と作業を行った。 (1)小倉進平『朝鮮語方言の研究』全体を通覧して,そこで用いられている音声表記,調査地点,調査項目に関する検討を行い,言語地図化を行う項目約200個を選定した。音声表記については,同書の凡例では詳しく説明されていないものを,同じ著者の他の論文を参考にしてその意味を明確にし,調査地点については,凡例に含まれていないのに,資料編に実際に登場する地点を整理し,それが地理的にどこであるかを明らかにした。また,調査項目については,すべての項目について,朝鮮半島のどの地点に関するデータが載せられているかを明らかにして,各項目の特徴を明らかにするとともに,それを地図化のための項目選定の基礎データとした。 (2)上記で選定した項目のうち,60項目について謝金を用いて,エクセルファイルの形式でデータ入力を行った。その際,データの可搬性を高めるために,音声記号は通常のフォントに含まれる記号列に置き換えて入力した。残りの項目は次年度以降に引き続き入力する予定である。 (3)言語地図作成ソフトウェアSealについて,Visual Studio 2013に含まれるVisual Basicを用いて,改訂版を作る作業を行った。Sealの以前の版に含まれている,複数の地図の合成や集計などの応用的機能はまだ未対応であるが,1枚の言語地図を描かせる機能は基本的に完成している。その際,若干の仕様の変更を行い,使い勝手と地図の品質を向上させた。なお,その成果ははSeal Vesion 8.0(ベータ版)として近日中にホームページで公開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,まず小倉進平の『朝鮮語方言の研究』を通覧して,さまざまな疑問点を解消するとともに,言語地図化のための項目の選定が完了したことが大きな実績であり,今後の作業に向けての基礎ができたと考えられる。 また,各項目のデータ入力は今年度中に約1/3程度を終えることができた。これは予定より若干少ないものの,ほぼ予定した通りと言ってもよい。 言語地図作成ソフトウェアの開発に関しては,基本的に1枚の地図を描かせる機能は完成しているので,これもほぼ予定通りと言える。ホームページ上での公表はまだ行っていないが,各種の研究会や,授業においてこのソフトウェアを実地に用い,また,指導学生の修士論文作成にもこれを用いさせることを通して,その実用性は確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,残りの項目のデータの入力を行うこと,ソフトウェアのさらなる改良,そして最も中心的な部分となる,言語地図の作成とその解釈を行ってその成果を公表することが大きな部分を占める。 ソフトウェアに関しては,現在Visual Basicを用いているが,これをVisual Cなど他の言語に移植したり,Macintoshのような,他のプラットフォームに移植することも発展的な課題としたい。 言語地図の作成とその解釈に関しては,筆者自身の他に,この研究に関心をもつ大学院生の協力も得て,完成させる予定である。その際,地図の作成方法の考究を行うとともに項目間での統一をはかることが重要な課題となる。また言語地図の解釈に関しては,各項目に含まれる語彙の用例について歴史的な資料を参照することが重要であり,そのために韓国語(朝鮮語)の中世,近代,開化期という各時代についての電子化された資料を活用して能率的に行うこととする。
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Causes of Carryover |
謝金の使用額が予定より若干少なかったこと,および「その他」の支出が不要であったことが大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は謝金,および「その他」の支出として使用する予定である。
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Remarks |
大学の筆者のウェブページの上記の場所において,最近の研究業績とともにいくつか業績についてPDF版をダウンロードできるようにしてある。
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Research Products
(9 results)