2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02510
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
磯部 美和 東京藝術大学, 言語・音声トレーニングセンター, 講師 (00449018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡部 玲子 日本大学, 法学部, 准教授 (60512358)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 言語獲得 / 複合動詞 / 語彙的複合動詞 / 統語的複合動詞 / 日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語を母語とする幼児(日本語児)が、複合動詞やテ形動詞を含む文など、同一文中に2つの動詞要素を含む構文を獲得する過程を実験的手法に基づいて調査し、日本語の統語知識の獲得メカニズムを明らかにするだけでなく、言語獲得理論および言語機能理論の構築に重要な資料を提供することを目的とする。本年度の研究成果は以下の通りである。 1 日本語の統語的複合動詞に関する先行研究を検討・整理し、それを基に幼児に対して実験を実施し、その成果を学会で口頭発表した。先行研究により、日本語児による統語的複合動詞の発話が限定的であることが報告されていた。本研究は、4-5歳児が統語的複合動詞を正しく理解できるかを、実験を通して調査し、参加児が「忘れる/直す」を後項動詞とする統語的複合動詞に対して正しい構造を与え、それらを含む文を正しく解釈していることを明らかにした。 2 日本語の語彙的複合動詞やテ形動詞に関連する研究を検討・整理した上で、前年度国際学会で口頭発表した、語彙的複合動詞の獲得について論文にまとめ、国際ジャーナルに投稿した。4-5歳の日本語児が語彙的複合動詞を正しく解釈していることを報告し、その獲得過程が生得的要因と生後の基本的な動詞の学習によるものであると論じた。査読コメントが返却され、これを基に改訂版を執筆中である。 3 1と2の実験では、4-5歳児が語彙的複合動詞と統語的複合動詞を正しく理解できていることを明らかにしたが、異なる子どもを対象に実験を行っており、同一の子どもが両種の複合動詞の意味的・構造的な違いを区別しているか否かについて調査する必要性が生じた。本年度は、共通の前項動詞を用い(例えば「投げ入れる」「投げ忘れる」)、それぞれの複合動詞の理解を調査した。結果は、語彙的複合動詞が統語的複合動詞よりも先に獲得されることを示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 統語的複合動詞に関する文献を調査し、実験を行って、学会において口頭発表した。 2 語彙的複合動詞に関する文献を調査し、その獲得に関する以前からの取り組みを論文にまとめ、専門ジャーナルに投稿した。 3 1と2により生じた新たな研究課題に対し、実験を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究実績を国内外の学会において発表する予定である。また、論文の再投稿や、新たな論文の執筆にも取り組む。さらに、引き続き先行研究を幅広く調査し、本年度の研究実績との関連性や日本語以外の言語との比較も見据えて、「動詞複合」に関するどのような構文の獲得を実験研究の対象とし、どのような予測が得られるかを検討する。実験調査の方法を検討・準備し、実験を実施し、国内外の学会発表に応募する。
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Causes of Carryover |
研究代表者と研究分担者は、本年度中に海外で行われる国際学会での発表を目指していたが、論文の執筆や新たな実験の実施準備のため、これを見合わせた。次年度に海外旅費として使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1 平成28年9月にアメリカで行われる学会(GALANA-7)において本年度の成果および次年度の調査内容を発表する予定であり、外国旅費を必要とする。 2 本年度の研究成果をまとめるため、また、投稿中の論文の書き直しの作業のために、言語理論・言語獲得関係の図書・ジャーナルを購入予定である。 3 実験の実施のために必要な機材を購入予定である。
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